J2新記録となる開幕9連勝 湘南ベルマーレはなぜ強いのか?
ルーキーながらレギュラーをがっちりとつかんでいる菊地が言う。「ウチのスタイルは前にボールを入れて、複数の選手が追い越していくことだと思うので。前線の3人にボールを当てることは常に狙っている。1点目のアシストも、PKにつながった2点目のパスも、(岡田)翔平君がいい形で顔を出してくれました」 ゴール前へタテパスを入れられれば、相手の守備陣は中央に絞らざるを得ない。ボールを受けた選手は1対1の勝負を挑むもよし、手薄になったサイドを攻め上がってきた味方に散らすもよし。3バックの左右を務める三竿雄斗と遠藤航もどんどんオーバーラップしてくるから、選択肢が大きく広がる。 継続があるからこそ、進化へトライすることができる。J1で16位に終わり、無念の降格を味わわされた昨シーズン。ベルマーレは早い段階で、チョウ監督の続投を決めていた。眞壁潔社長が明かす。「たとえJ2に落ちても続投させるつもりでしたし、コンフェデレーションズカップでJ1が中断した6月には決めていました。チョウなくしてはこのスタイルはあり得ないので」 指揮官自らが2年前に命名した「湘南スタイル」とは何か。キャプテンのMF永木亮太がこう説明してくれたことがある。「ボールを奪ったら手数をかけないでとにかく前へ、前へと行くことですね。前への推進力は自分でもすごいと思っている。両ワイドのMFはもちろん、僕たちボランチや最終ラインの選手もどんどん前の選手を追い越していく」 チョウ監督と選手たちが、いまも心に焼き付けている試合がある。昨年9月28日。ホームに浦和レッズを迎えたJ1第27節。先制されながらも主導権を奪い返し、後半30分、36分の連続ゴールで逆転。ロスタイムに突入する直前に喫したまさかの失点で、無念の引き分けに終わった一戦だ。試合後のロッカールームで、チョウ監督は選手たちに頭を下げた。自分のせいで勝たせることができなかったと詫びた。レッズ戦の映像をよく見るという指揮官は、最後の失点の原因よりも、ダメ押しの3点目を奪えなかった原因を突き詰めている。