<独占>イトーヨーカ堂 撤退したはずのアパレル事業での挑戦【WBSクロス】
特集「WBSクロス」。今回のテーマは「アパレル事業再生」です。先週セブン&アイ・ホールディングスが、上場を検討すると発表した子会社「イトーヨーカ堂」が、撤退したはずの「アパレル事業」で新たな挑戦を始めています。その挑戦とは、アパレル国内第3位のアダストリアと組んで新ブランド「ファウンドグッド」を立ち上げることでした。現場を取材しました。 横浜市南区にあるイトーヨーカドー。その2階にあるのが、11日にオープンしたアパレルブランド「ファウンドグッド」です。一度は完全撤退したイトーヨーカ堂の直営アパレルが、外部企業と協業し2月に創設したブランドです。 イトーヨーカ堂はおよそ100年前、浅草に開業した用品店「羊華堂」から始まりました。2005年には百貨店伊勢丹のカリスマバイヤー藤巻幸夫氏を衣料部門トップに据え、2015年には同じグループのそごう・西武と共同ブランドを作ったりと、挑戦的な取り組みを続けました。 しかし、ユニクロなど高品質低価格を謳う企業に押され、この20年ほどでアパレルの売上は3分の1に縮小。去年3月、ついにアパレル撤退を発表しました。 そして今年、その事業の復活へ選んだ道が外部企業との協業ブランド「ファウンドグッド」の立ち上げだったのです。 アパレル大手アダストリアが開発、製造。イトーヨーカ堂がそれを買い取っての販売、店舗運営を手がけます。テレビ取材を一切受けずに進めてきたこの新事業。テレビ東京のカメラが取材を許されました。
協業で変わった3つのポイント
今、人気があるという麻混のパンツ。この商品は330グラムと軽量で、ひんやりする素材で作られています。価格は3300円。ユニクロを意識した価格設定で、30代から40代をターゲットにしています。 協業で変わったポイントの一つが、商品力。以前のヨーカ堂のアパレルはファッション性がないとのイメージも持たれていましたが、アダストリアの力でこの懸念を払拭したのです。 協業で変わった2つ目のポイントが接客です。以前の売り場は商品を置くだけでしたが、今はアダストリアの店で研修を受けたヨーカ堂の接客スタッフを配置しています。 協業で変わった3つ目のポイントが、店作り。例えば売り場は高さを出し、手前から見えるようにわかりやすく作っています。アダストリアが得意だというマネキンの配置で、商品をアピールする取り組みです。さらに通路を広く取って、歩いていると気づけば「ファウンドグッド」の中にいるという作りになっています。 また洋服に加え、雑貨の品揃えを増やし、気軽に立ち寄れる店を演出。これはアダストリアで一番成長しているブランドの手法です。 「通りかかった時におしゃれだなと思い寄ってみた。食品を買ってここを通りかかった」(客) アパレル売り場がヨーカ堂の中での買い回りを誘う場所へと変わりつつありました。 協業相手に頼ってばかりと思いきや、アダストリアにもメリットがあります。アダストリアの小林千晃執行役員によれば「場所がいい。立地がいい」と総合スーパーの立地や集客力が魅力だといいます。 アダストリアは国内3位のアパレル企業ですが、1位のユニクロを運営するファーストリテイリングなどに追いつくため、次の一手を探していました。総合スーパーとの協業に活路を見いだしたのです。 「GMS(総合スーパー)には客が来ているのに、なぜ(衣料品売り場に)行かないという疑問があった。アダストリアが総合スーパーをファッションで救うことが、今後いろいろな業界へのチャレンジになる」(小林執行役員)