2014年のテレビを振り返る(1)── ネットとテレビ報道の関係が大きく変わった 水島宏明
2014年という年は、“メディアの王様”だと自任する「テレビ」がもはや“裸の王様”にすぎないことが露わになった節目の年になったと思います。テレビ報道についての研究者として、テレビ番組の批評家として私が見たこの1年をいくつかのトピックを紹介しながら解説していきます。
「4Kテレビ元年」? 大型テレビは普及するのか
政府やテレビ業界、あるいは電機メーカーを挙げて「4Kテレビ元年」を掲げ、電器店では「4K対応テレビ」が売られています。4Kとは今のデジタルハイビジョン放送と比べて画素数が4倍の高画質のテレビ放送のことで、政府(総務省)が将来的な実現を目指しています。 でも、現在数多く販売されている4K対応テレビとは、4K画質のDVDなどを再生すると高画質で見ることはできるものの、将来的にテレビ放送が4K画質で送信されるようになっても、チューナーが対応していないためにそのままでは4K画質で見ることができない「なんちゃって4Kテレビ」なのです。だからメーカー側はあえて「対応」という言葉を入れているわけです。 もちろんテレビ画面の走査線の数は多いので現在のハイビジョン放送でも若干きれいに見えるのですが、4K画質を反映しているわけではありません。また、4K画質の放送が実現される段階になったとしても4Kの高画質をはっきり実感できるのには、最低でも60インチ程度の大きな画面が必要だと一般的に言われています。 たとえば私の自宅のテレビは、32インチ1台と19インチ1台ですが、かりに60インチのテレビを1台置くとなるとどこに置いていいか悩んでしまうほどスペースがありません。つまり、4Kの放送になると、現在、一般的に普及しているテレビ受像機に比べて、かなり大画面テレビでなければ、その良さを十分に堪能できません。狭い、小さい、と言われる日本の住宅事情を考えると、4K、さらに8K(現在のデジタルハイビジョンテレビと比べて16倍の画素数)の時代が本当に来るのか、かなり疑わしいことも実情です。