知る人ぞ知る名店が高円寺にあり! 看板メニューは肉が主役の「麻婆豆腐」!
ふんわりした豆腐と時折入ってくる細切り和牛が作る食感のコントラストを絶妙なとろみ加減の餡がまとめあげて喉を通った後に残るのは和牛の風味とスパイスのいい香り。この新たな感性を纏わせた麻婆豆腐に心底惚れてしまいます。
ただおいしいものを作りたいだけ!
『桃の木』では小林さんの最高峰の技術を目の当たりにしました。特に中国料理ならではの高温の火力と中華鍋の扱いは圧倒的で『300℃ほどの高温の鍋に野菜を入れて油煙を外に吹き飛ばしながら炒めなさい』と言われたけれど、意味がまったくわかりませんでした。食べてもらうと『焦げてる』と返されるんです。もちろん見た目は焦げてないし、それなりにできていると思うのですが、小林さんが作ると全然違うんです」と。
「今、教えてくれる人がいない中で、たとえ誰においしいと言われても小林さんの絶対的な料理を知っているから、これが良いのか悪いのか改善の余地があるのかが判断できる。だから自分の中で腑に落ちないものは提供しません。例えば『エビチリ』はチリソースに海老の殻のだしを使って“味を調える”んです。麻婆豆腐の炒め油に牛脂を使うのと同じですが、そういう“調える”ことが『酢豚』にはまだ見いだせていないんです。何というか食材とソースがまったく別の世界のものという感覚で。だからまだお客様には出していません」と、とても自分に厳しい。
「『齋華』では料理に携わる者としての在り方を学びました。店主の齋藤博人さんは厨房に敬意を表し、毎日冷蔵庫までピカピカに磨くんです。だからクラシックな四川料理を、京都の上質な食材を使って表現する齋藤さんの料理は本当に美しい。親子2代にわたって京都在住の人から『中華は齋華さん』と言って毎月通っていただける、京都でそんな風に愛される店はなかなかないと思います」と話しますが、「極彩」「極彩 椿」と地元の人に愛されてきたのは師の教えを守っている表れ。そんな臼井さんだからこそ、提供する料理はどれも美しく「ただおいしいものを作りたいだけなんです」という言葉は心に響きます。今最も輝いている料理人の一人である臼井さんの料理をぜひご堪能あれ。
極彩 椿
住所: 東京都中野区大和町1-65-2 TEL: 050-5593-8674
文:高橋綾子、食べログマガジン編集部 撮影:溝口智彦