突然の破産「船井電機」に起こっていた異変…調査会社が倒産の「Xデー」に目撃した驚きの現場
中小企業では何度も目撃した現場だ。だが、大阪から送られてきた写真は、人数の多さ、ワイシャツ姿の背中が普通と違うことを教えていた。 船井電機の破産申立書によると、船井電機の単体従業員は532人、連結子会社を含めると2160人に達する。地元のハローワークが再就職支援に乗り出すなど、関係先は対応に当たっている。また、申立書は事態の収束に時間を要することを感じさせる点が2つあった。 ■負債総額は469億円よりも巨額の可能性
1つ目は負債総額だ。破産申請時の負債総額は469億円だが、実態はもっと大きい可能性がある。TSRが入手した船井電機の9月末の試算表では、資産総額は643億円、負債総額は474億円だ。だが、船井電機は船井電機HDに対し、253億円を貸し付けている。船井電機HDは船井電機からの賃料収入が主体で、最大の収入先が破産した以上、貸付金の回収は不可能だ。 さらに、試算表には関係会社株式として230億円が計上されている。申立書では関係会社について「債務者(TSR注:船井電機)の資金繰り悪化により単体で資金繰りを維持することが困難な会社が含まれており、その株式は相当程度無価値となることが想定される」と記載している。
このため、合計483億円(貸付金253億円+関係会社株式230億円)に対する手当てが必要だが、9月末の試算表の引当金合計は200億円に満たない。 適正な引当金や関係会社株式の評価損を加味すると、単純合算で負債総額は約800億円(2024年9月末の負債総額474億円+船井電機HDへの貸付金253億円+関係会社株式230億円-引当総額188億円+その他顕在化した債務)に膨れ上がる。 もう1つは、関係会社の行方だ。「株式は相当程度無価値となることが想定される」(申立書)と記載がある以上、存続の可能性を精査しなければならない。TSRが入手した関係会社一覧では、関係会社は国内外で30社を超え、電子機器の修理から貨物運送、語学教育まで業種はさまざまだ。
■船井電機の関連会社の行方は? このうちの1社に断熱材の製造販売を手がけるEIF西日本(岡山県)がある。今年9月に破産しているが、外部への資金流出から大規模な粉飾に手を染め、8月に会社更生法の適用を申し立てられた環境経営総合研究所が55%、船井電機が99.5%の株式を保有する船井興産(大阪市、不動産賃貸業)が45%の株式を保有する企業だ。 家電の名門、船井電機の倒産までの真相は表層的な動きでは追いきれない。今後、深い闇を破産管財人が明かしていくことが期待される。
原田 三寛 :東京商工リサーチ情報本部情報部長