ソニーグループの「半導体レーザー」出荷が軌道に乗り始めた
データセンター記憶量増に貢献
ソニーグループが開発したハードディスク駆動装置(HDD)用半導体レーザーの出荷が軌道に乗り始めた。記憶容量を大幅に伸ばせることが評価され、HDD大手の米シーゲイト・テクノロジー向けに6月末で累計約7000万個以上を出荷した。生成人工知能(AI)の普及でデータセンター(DC)の需要が急増する中、シーゲイトとともに次世代HDDで課題解決に貢献する。 【写真】ソニーGの半導体レーザー 開発したのは、半導体子会社のソニーセミコンダクタソリューションズ(神奈川県厚木市)。熱アシスト記録(HAMR=ハマー)と呼ばれる方式に対応したHDD用の半導体レーザー。HAMRは、レーザー光でディスクを極めて局所的に高温で瞬間加熱することにより、保磁力(磁界の強さ)を一時的に低下させる仕組みで、情報を高密度に記録することができる。 ソニーセミコンの半導体レーザーはこれを実現する中核部品として「10年以上シーゲイトと開発をしてきて、ようやく量産にこぎつけた」(清水照士社長)。2018年から白石蔵王テクノロジーセンター(宮城県白石市)で評価用の半導体レーザーの出荷を開始。24年5月には新設したタイ工場で本格的に量産を開始し、6月から出荷して徐々に出荷量を増やしている。 現在、一般的な3・5インチのHDDでは1台にディスクを10枚搭載し、垂直磁気記録(PMR)で情報を記録する。ただ、記憶容量は1台24テラバイト(テラは1兆)程度が物理的な限界とされており、新技術の開発が求められていた。シーゲイトではHAMR方式の採用で、30テラバイトの記憶容量を持つHDDの出荷をこのほど始めており、50テラバイト以上のHDDの開発も視野に入れる。 HDD1台当たりの記憶容量が倍増すれば、設置面積が同じでもDCの記憶容量も倍増する。運営の効率化や建設コストの削減などが期待できる。ソニーセミコンの清水社長はHDDの世代交代により「30年には数百億円レベルの利益は確保したい」と期待している。