「戦闘機界のシビック」F-16が選ばれなくなってきた根本理由
ウクライナも重宝 戦闘機の傑作F-16
2024年12月5日、ウクライナ国防省は公式メディア「アーミーインフォーム」で、オランダなどから贈与されたF-16戦闘機の活動状況について報じました。ロシアが使用した大型自爆型ドローン「シャへド」や巡航ミサイルなどを多数撃墜し、2024年8月の運用開始からわずか3か月で、すっかりウクライナ空軍にとって不可欠な存在となっているようです。 【エジプトさんコッチ買うらしいわよ】F-16の後継となる「中国の戦闘機」(写真) 航空自衛隊のF-2戦闘機のベースにもなったF-16は、1970年代に開発された戦闘機ですが、2018年6月の時点で4604機が製造されており、現在も最新仕様機「F-16V」の生産が継続しています。 4604機という生産機数は、1万機以上が生産されたロシア(旧ソ連)のMiG-21戦闘機や、5195機が生産されたF-4「ファントムII」戦闘機には及びませんが、1970年代以降に実用化された戦闘機の中では群を抜いています。1973年の試作機生産開始から半世紀を経た現在まで生産が継続されている点から見ても、商業的に大成功した戦闘機と言って差支えないでしょう。 F-16は実戦での成績も優秀で、前に述べたウクライナ空軍での活動だけでなく、1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争などでも大きな戦果を挙げています。 このように商業面でも軍事面でも成功をおさめているF-16ですが、2024年に入ってからの商戦では、エジプトとタイで他の戦闘機に敗北を喫しています。
F-16の後継に「ロシア機」いや「中国機」
エジプトは2024年12月現在、1980年代に引き渡された初期型のF-16A/Bを40機と、その後段階的に買い増したF-16C/Dを178機運用しています。 初号機の引き渡しから40年以上が経過したF-16A/Bを置き換えようと、エジプト政府は当初、その後継機をF-16Vとするためアメリカ政府と交渉していました。しかしまとまらず、エジプトメディアは2019年に、ロシアが提案していたSu-35戦闘機が内定したと報じました。 エジプトがロシアとSu-35の導入に向けた交渉をしていたのかは不明ですが、ウクライナ侵攻後、導入を公式に否定。その後もエジプトは、F-16A/Bの後継機の選定作業を進めていました。同国メディアは2024年9月に、アメリカがロシアとともに神経を尖らせている中国とパキスタンが共同開発した「J-10C」戦闘機が内定したと報じています。 J-10Cを選択した理由の一つは、1機4000~5000万ドルという、F-16Vより1000~2000万ドル近く安い価格にあると、エジプトメディアなどは報じています。 このJ-10Cの導入についてエジプト、中国、パキスタンの各国政府から公式な発表はありませんが、2024年9月にエジプトのエル・アラメインで行われたエアショーにJ-10Cが参加していたことなどから見て、ある程度、話は煮詰まっているものと考えられます。