昭和51年生まれの私 作家、万城目学さん「昭和を知っているかどうかで描写力は変わる」 プレイバック「昭和100年」
昔、見せ物小屋というものがありました。私も天神祭に連れて行ってもらったときに、父にせがんで「ヘビ女」のおどろおどろしい怪奇絵が掲げられた見せ物小屋に入ったことがあります。父には「後悔するからやめとけ」と言われたんですが。詳細は避けますが、15秒くらいで父に「もういい」って言いました。あの経験で社会を知りました。今はああいうものもなくなりました。
昭和とはいかがわしいけれどエネルギッシュなものがまかり通る時代だったんでしょうね。大阪にだけそれが少し残っているかもしれません。昔、作品にもしましたが、江戸時代の商人から培われてきた、商業主義や現実主義というものが背景にあるように思います。(聞き手 池田進一)