沼津餃子って?地元民が熱狂する「中央亭」の謎、焼き上げてから“茹でる”という独特のスタイル、餃子から感じた自信と誇り
■沼津餃子というコトバは時期尚早? おっと、あまりにもおいしかったので沼津餃子のことを忘れていた。 「当店には支店や姉妹店、のれん分けの店はありません」と友田さん。店の壁にも同じことが書かれた紙が貼られていた。にもかかわらず、「中央亭」とよく似た、というか真似た餃子を出す店があるようで、どうやら沼津餃子というコトバはその界隈から出てきたらしい。 もちろん、浜松のように餃子を沼津の名物にして、地元を活性化したいという思いもあってのことだろう。しかし、その場合、元祖である「中央亭」に意見をうかがうのが筋というものだ。
ひと頃流行ったフルーツ大福やフルーツサンドも然り、人気商品が生まれると、それにあやかりたいと二番煎じや三番煎じが出てくるのは世の常である。「中央亭」にしてみれば迷惑この上ないだろうが、筆者としてはそれを否定するつもりはない。むしろ、真似をする店がどんどん出てきて、それぞれがお互いに切磋琢磨しておいしい餃子が生まれることを歓迎する。 それにいくら形だけを真似しても、「中央亭」の餃子にはならない。皮の厚みや餡の中身、肉とキャベツの割合、さらにはからし油を再現することは、仮にレシピを入手したとしても不可能である。なぜなら、友田さんをはじめ、「中央亭」で働くすべての人は自分たちの作る餃子に絶大な自信と誇りを持っているからだ。
そんな中でやれることは「中央亭」の模倣ではなく、まったく異なるテイストの餃子を作ることだろう。多種多様な餃子が沼津から続々と生まれたときに初めて「沼津餃子」として町おこしができるのではないか。筆者自身、これまで数多くの町おこしに携わってきただけに、そう思えてならない。
永谷 正樹 :フードライター、フォトグラファー