沼津餃子って?地元民が熱狂する「中央亭」の謎、焼き上げてから“茹でる”という独特のスタイル、餃子から感じた自信と誇り
なんと、焼き上がった餃子が並ぶフライパンにお湯を注いでいるではないか! それも蒸し焼きにするレベルではなくて、餃子の高さくらいまでお湯をなみなみと流し込み、茹でているのである。焼き上げてから茹でる。これが「中央亭」の餃子なのだ。なるほど、これなら時間が経ってもおいしく食べられるに違いない。 この調理法はいつ、そして誰が考案したのだろう。それが気になって仕方がない。 「店の創業者である祖父母が考えたのは間違いありません。しかし、なぜ焼いてから茹でるのかは私にもわからないのです」(友田さん)
友田さんによると、「中央亭」の創業は1947年。祖父母が沼津駅前の仲見世通りのビルの一角を間借りしてはじめたカウンター8席程度の小さな中華料理店がルーツだという。 「店を開店させる前は戦後のヤミ市で食べ物を売っていたようです。祖父は器用な人でラーメンの麺も自ら打っていたと聞きました。おそらく餃子も、食べるものもない時代だったから、お腹いっぱいになってほしいという思いから、この大きさになったのだと思います。ただ、メニューを餃子とライスだけにしたのがいつのことなのかもわかりません」
その後、父親が店を継いで、当時は沼津の中心街だった大手町に新たな店を構えた。店の周りは繁華街で、クラブやスナックのママさんが客に「中央亭の餃子はおいしい」と薦めてくれたり、店の近くにある会社の社長が仕事納めの日に社員全員にお土産として持たせてくれたりして、口コミでどんどん評判が広がっていった。 「沼津の人は地元意識が強くて、市外へ嫁いだり、転勤したりした方が帰省するたびに立ち寄ってくださいます。その方々が地元の知り合いにお土産にと買われて、食べた方が店に来てくださって、またどなたかにお土産として贈る。その繰り返しでした。今はSNSを見て県外や外国からも来られるお客様が多いですが、口コミに勝るものはないと思っています」(友田さん)
【11月9日10時55分追記】初出時、誤解を招く記述があったため、記事の一部を削除しました。お詫びして修正いたします。
永谷 正樹 :フードライター、フォトグラファー