「ポケベル/トランシーバー爆発で死傷者数累計3200人」。あの不可解な事件はどのように起きたのか?
「目標は明確です。現在、イスラエル北部から6万7000人の国民が国内避難しており、政治問題となっています。なので、彼らを帰還させることが目標です。 そのためには、ヒズボラを物理的に国境から遠ざけたい。具体的には、この地域に潜入しているヒズボラの特殊部隊・ラドワン部隊を、国境から北に30kmのレバノン領にあるリタニ川の北側まで追い返して、緩衝地帯を作るのが目標です」(菅原氏) ポケベル/トランシーバーという連絡手段を破壊された翌々日の20日、そのラドワン部隊のイブラヒム・アキル司令官が、同部隊幹部、ヒズボラ幹部と共にレバノンの首都・ベイルートに集った。 そして、イスラエル空軍はそこを空爆し、アキル司令官を含めた複数のヒズボラ幹部を殺害。イスラエル軍は歩兵部隊の地上侵攻以外の任務は着実に進めている。 「ヒズボラも相当の衝撃を受けて、非常に混乱してパニックに陥っています。ただし、何年もの間、イスラエルから色々と攻撃されていますから、年内は難しいものの、しばらくしたら立て直してくると思います。 ポケベル/トランシーバーが無ければ連絡はさらにアナログで、バイクの伝令でやるんじゃないでしょうか。そして、すでにイラクのシーア派民兵は『助けに行く』と発表していますから、シリアからの支援を合わせて、数万人単位で戦闘員を送ってくる可能性はありますね」(菅原氏) イスラエル軍はリタニ川まで歩兵を入れた地上侵攻をすぐにでも始めなければ、ポケベル/トランシーバー爆破奇襲で得たアドバンテージを失う。しかし、ガザ地区の激戦は1年もの間続いている。すぐにレバノン南部のさらなる激戦地帯に転戦させるには、イスラエル軍歩兵たちの疲労は激し過ぎる。 「ヒズボラが立て直す前に地上侵攻を進めないと厳しいです。米ウォールストリート・ジャーナル紙によると、イスラエル軍は数ヵ月にわたってガザで活動した後、過去数日間に南部から北部に軍の特殊部隊と空挺部隊からなる一個師団を移動させたと言います」(菅原氏) 9月25日、イスラエル軍のヘルジ・ハレビ参謀総長は予備役二旅団に対して、招集命令を出したと報道されている。 「イスラエル軍のレバノン南部への地上侵攻は想定通りです。ヒズボラは立て直してくるでしょうし、さらにイラク、シリアからの応援も来ます。戦争は泥沼になっていく可能性がありますね」(菅原氏) 取材・文/小峯隆生