「過去最高のピッチャーじゃないかと」五十嵐亮太が語る37歳ダルビッシュ有の進化“しょんべんカーブ”から日米200勝投手へ「ダルビッシュが凄いのは…」
ダルビッシュが凄いのは“縦”にも“横”にも曲げられること
彼の変化球はとても多彩でそのどれもが一級品ですが、一番得意なのはスライダーでしょう。スライダーやカットボールなど横曲がりのボールが得意なピッチャーは大体、逆方向への曲がりとなるシンカーやツーシームなども得意ですが、一方でカーブや縦スラなど縦に綺麗に変化する球種は意外と苦手なものです。横の変化と縦の変化では体の使い方やコントロールが違うため、その両方を投げようとするとフォームに悪影響を及ぼしたり、どこかでズレが生まれてしまう。 でもダルビッシュは横変化も縦変化も綺麗に投げ分けられるんです。フォームに違いが出ることもなく、リリースポイントも一定で縦にも横にも斜めにも曲げられる。これは凄いことです。彼自身の器用さという資質もあるでしょうが、それ以上に時間を費やして試行錯誤し、指先の握りの感覚や意識といった細かいところまで常に考えているという努力の証でしょう。
小学生の頃「しょんべんカーブ」と言われて…
ダルビッシュが変化球に興味を持ったきっかけは、小学生の頃にカーブを投げたら「しょんべんカーブ(キレのないカーブのこと)」と言われて悔しかったから、という話を聞いた事があります。悔しい思いを力に変えて、あれだけの多彩な変化球を投げられるピッチャーに成長したのは凄いことです。 そもそも、アマチュアの時点であれだけ体格に恵まれていて球速も出ていれば、真っ直ぐで押すピッチングスタイルになってもおかしくない。にもかかわらず彼は、真っ直ぐの速さやキレはそのままに、さまざまな種類の変化球を身につけていった。日本で言えば「変化球ピッチャー」というカテゴリーに入るのでしょうが、いわゆる典型的な「変化球ピッチャー」は普通、あそこまでの真っ直ぐは投げられないですからね。 本格派にして技巧派。両方の要素を最高水準で持ち合わせている。それが彼の魅力です。技術の高さや投げ方も含めて、僕は過去最高のピッチャーじゃないかなと思っています。 今は故障で離脱していますが、彼ももう37歳ですから、年齢を重ねるとともに小さな怪我が多くなってくるのは自然なことです。今後は年間通してこういうことが起こる可能性が高くなるでしょうし、練習量を少し調整したり、コンディショニングで変えていかなければいけない部分も出てくるはずです。でも、野球人生の中であらゆる変化に常に向き合い乗り越えてきたからこそ今のダルビッシュがある。そういう意味では40歳に近づき年齢の壁に立ち向かいながら、彼がどんなピッチャーに進化していくのか、その挑戦を見られることもとても興味深いと思っています。 (構成=佐藤春佳)
(「メジャーリーグPRESS」五十嵐亮太 = 文)
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