遅刻とミスを連発、社長にも逆ギレの28歳「問題社員」…それでも「すぐに解雇」は危険、適切な指導のポイント
「問題社員」のその後
一ヶ月後、上岡社労士が再びT社を訪れると、驚くべき変化がありました。 「上岡先生、斎藤さん、少し変わりましたよ」 照屋さんは嬉しそうに報告します。 「この一週間は一度も遅刻がありませんでした。それに、自分からメモを取るようになって……」 上原社長は、顧問社労士の助言をもとに、再度斎藤さんと面談をしました。そこで会社が求める業務水準と、現状その水準に達していないことを具体的に説明し、また今後も遅刻や欠勤が続いたり、職務怠慢から他の従業員の負担が増えたりするようであれば懲戒処分や解雇の可能性が出てくることを理解してもらいました。 業務日報の提出を指示し、教育係からの指導を毎日フィードバックしています。自分の仕事のレベルや勤務態度を客観的に自覚することできたのか、不承不承の様子はありながらも、教育係の指導にも従うようになり、遅刻欠勤もなくなったそうです。 問題社員への対応は迅速さが求められますが、安易に解雇という手段に頼るのではなく、会社がとれる対策や配慮を準備しておき、すぐに実行できるようにしておきましょう。 万が一、解雇を選択する場合には、会社の解雇回避努力が充分に説明できるよう記録を残しておくことはもちろん、弁護士や社労士など専門家に事前に相談することも敗訴リスクを避けるための重要なポイントです。
上岡 ひとみ(特定社会保険労務士・社会保険労務士事務所・上岡ひとみ経営労務研究所 所長)