紫式部が反論した「自分への悪口とあだ名」の呆れた中身。 宮中でほかの女房から目の敵にされたことも。
今年の大河ドラマ『光る君へ』は、紫式部が主人公。主役を吉高由里子さんが務めています。今回は宮中での紫式部の処世術について解説します。 著者フォローをすると、連載の新しい記事が公開されたときにお知らせメールが届きます。 【写真】宮中での女房たちとの交流に嫌気がさした紫式部はキャラ変を試みる。写真は紫式部ゆかりの雲林院。 ■同僚に言いたいことがあっても我慢 『紫式部日記』の中には、紫式部が自らの想いを吐露している箇所がいくつもあります。 一条天皇の中宮・彰子(藤原道長の娘)の女房として働く紫式部は、多くの同僚の女房たちとともに働いていました。
同僚に「言いたいこと」はあるけれど、「いやいや」と思い直しグッと我慢することもあったようです。それは「わかってくれない人に言っても、何の得にもならない」からだとのこと。 他人を貶して「我こそが」と思っているような人の前では、「口を利くのも」嫌になるそう。紫式部は、そうした鬱陶しい人の中には、なんでもこなせる優秀な人は滅多にいないと記しています。 また、そうした人が、同僚である紫式部の顔を見て(紫式部は、立派な私を前にして、引け目を感じているのだ)と思い込むこともあったようです。
しかし紫式部曰く、それは「引け目を感じて、黙っている」のではなく、「これ以上貶されたくない」という気持ちだったから。 つまり、紫式部は傲慢で鬱陶しい人との交流を面倒に感じて、「ボケて何もわからない人物に完全になりきっていた」のでした。 そんな紫式部に対し、同僚の女房は「あなたがこんな人だとは思ってもみませんでした。もっと気取っていて、他人を威圧し、近づきにくく、よそよそしい。物語好きで、何かというと歌を詠み、人を人とも思わない、憎らしい顔で他人を見下す人に違いないと感じていました」と告げたのです。
更には「そんなことを、皆で言い合って、あなたのことを毛嫌いしていたのです。それが会ってみたら、不思議なほど、おっとりしていて、別人ではないかと思ったほどでした」とも言ってきたようです。 そんな話を聞き、紫式部は同僚からの言葉を「恥」と思い、また「おっとりしていると見下されてしまった」とも感じました。 しかし、紫式部は他人からそう思われても「これが自分(紫式部)の本性なのだ」と考えを変えて、仕事を続けていました。