【新春インタビュー ソフトバンク城島CBO】王イズム継承を胸に チャレンジ精神で新たな時代の扉開く
1日から新ポストで始動するソフトバンクの城島健司チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO、48)がスポニチの正月インタビューで大いに語った。“王イズム継承”を胸にチームの未来へ熱い思いを吐露。シーズン中でもコーチを配置転換していく“大シャッフル予告”や、“ポスト甲斐”を争う捕手陣に対する本紙たじたじのアドバイスなど、持ち前のウイットに富んだトークが展開された。(取材=木下 大一、福浦 健太郎) ――20年に会長付特別アドバイザーとして球界復帰。昨年からシニアコーディネーター兼務となり、今年からCBOに。 「ありがたい話、王会長からは毎年のように“ユニホームを着なさい”ということを言ってもらっていて。指導するイメージが湧かずに“うん”と言ってなかったんですけど。王さんがつくったホークスの30年間の歴史を未来に伝えたいというのが僕の根本にあって。最初はお客さんも少なくチームも弱かった。そういったことを20年後に入ってくるフロントにも知っていてほしいと思っています」 ――チームづくりでも王イズムの土台を未来へつなげていく。 「単純に話すと野球界って、監督が代わったらコーチも代わり、選手起用も変わり、野球も別のものになる。それを繰り返したりするじゃないですか。でも、うちの場合は王さんがつくった30年間がある。世界的に見ても30年以上、一人の人物がチームの幹になってきたチームはないと思うんですよ。そのベースを引き継ぎ、アップデートしていこうとやってるんですね」 ――アップデートの点では新たなことにも挑戦していく。 「20年前に打撃コーチが技術指導しなくていい時代が来るなんて思いますか?でも実際に(今季から技術指導はデータサイエンス部門の担当となり)来たわけです。ダメだったら今年91勝したんだからそこに戻って、未来に“打撃コーチは人間がするべきだ”と伝えていけばいい。チャレンジ精神のある組織でありたいというのは思ってます」 ――編成面では甲斐選手の移籍はどう捉えているか。 「正捕手が抜けることは組織として大きな出来事なので危機感は感じてます。しかも彼は大きな大会でもマスクをかぶってきたキャッチャーですから。そりゃ残ってほしかったですけど。でも、FAは選手の権利。今年FAを取ること自体は分かっていたことですし、フロントとして準備はしてます」 ――直後に急きょ2、3軍バッテリーコーチの入れ替えも。 「あれは事前に密に話もしていて。これだけは言っておきます。シーズン中も替えていきますよ。いい意味でのコーチの配置転換は積極的にやっていこうと思っています」 ――状況に応じて柔軟に考えていく。 「誰がマスクをかぶるか分からないですけど、例えば谷川原なら彼を一番見ていて知ってるコーチが必要じゃないですか。その選手のことを知っていて、調子が悪くなったらどうなるかだったり性格を含めて進言できる人が近くにいる方がパフォーマンスが出しやすいと思うので」 ――捕手の話でいえば出番がなかった選手にはチャンス。 「そうです!最初は失敗もしますよ。でも、それが経験になるんです。やってる時は失敗して“よっしゃ1個経験した”なんて思えないですけどね。その選手たちがやりやすいようなサポート、バックアップを現場とわれわれでしていきたいですね」 ――彼らに送るアドバイスとしては。 「僕のアドバイスとしては…。これはCBOとしてではなく、プレーヤー、OB、キャッチャーとしてですけどね。テレビと新聞を1年間捨てることですよ。スポニチを取ってるなら1年間、契約を解除する(笑い)」 ――えっ!(笑い) 「やっぱり入ってくる情報があるので。とりあえずキャッチャーは全員1年間スポニチをやめましょうと。僕はスポニチ取ってるんでチェックしときますけど」 ――現役時代の城島CBOは厳しい記事を原動力にもしたと。 「僕はね。同じように逆にできるならいいけど。でも、そうじゃないならね。打った時だけ見るような、そういうこともやめないといけない」 ――昨今はSNSで批判されて苦しむ選手も増えている。 「今はそうですよね。本人たちに関していえば、そこも気になるなら見ないほうがね」 ――話は変わりますが、新たな取り組みとしては今季からメンタルパフォーマンスコーチが誕生する。 「他のスポーツやアメリカではとっくに必要な分野であり、少なくとも10年後はどの球団もどの組織も持ってると思います。今の時代は必要でしょうね。現場でも(要望が)上がっているので、そこは取り入れました」 ――CBOは強いメンタルを持っていた印象。 「いやいや。俺だって枕をぬらした夜はありますよ(笑い)。高給取りになり経験を積んだら、いろいろ見えて悩みはむしろ大きくなるんです。ただ、隠すのがうまくなるんですよ。拓也(甲斐)とかも一年ごとに成長し、強くなったなと思いながら見てましたよ。今年マスクをかぶる捕手も同じ次元ではいかないもしれないですけど、一日、一日それがあると思います」 ――悩みながら成長していってくれれば。 「はい。ファンの皆さんも、打った、打たない、打たれたとかじゃなく、その表情や発言が変わったり、経験を積んでいく姿を見てほしい。僕もそこが楽しみかな。別に甘やかすように言ってるわけじゃないですし、ダメだったら厳しく記事に書いてもいいですよ。でも、新聞は1年間取ってないんで見ないんですけどね(笑い)」 ◇城島 健司(じょうじま・けんじ)1976年(昭51)6月8日生まれ、長崎県出身の48歳。別府大付(現明豊)から94年ドラフト1位でダイエー入団。99年から7年連続ゴールデングラブ賞、2003年パ・リーグMVP。06年からマリナーズ、10年から阪神でプレーし、12年限りで現役引退。国内14年間の通算成績は1323試合で打率.296、244本塁打、808打点。メジャー4年間通算は462試合で打率.268、48本塁打、198打点。20年に球団会長付特別アドバイザーとしてソフトバンクに復帰した。