復興は「地方創生への橋渡し」 経験・ノウハウ残すことも“使命” 復興庁・末宗事務次官
Q:ゼロから始めた組織です。どうやって職員を集めたのでしょうか?
宮内庁と消費者庁以外の全省庁から職員が来ています。全体で職員は約520人いますが、(今年1月現在)多い順でいうと国土交通省(67人)、農林水産省(53人)、経済産業省(42人)、財務省(31人)、厚生労働省(26人)、総務省(23人)、文部科学省(18人)と続きます。 国交省はインフラやまちづくり、農水省は被災地の営農再開、林業の再生、水産加工・漁業の支援、経産省は原子力災害の対応が所管ですので、それぞれの省庁から専門家が集まっています。復興というのが「トータル行政」だということが分かりますね。 また15社ほどの民間企業からも若手社員に来ていただいています。例えば地元産業で販路開拓が必要なときには我々公務員よりも民間企業出身者のノウハウが有効活用できます。さらに、自治体からも職員が出向してきています。 このように「ハイブリッドな組織」が復興庁の強みです。
Q:一方、同じ省庁出身者が固まっていそうな部署もあります。内部が縦割りのままでは力を発揮しきれないのではないでしょうか?
復興庁の仕事を進める上で意識しているのは、各部署がバラバラな動きをするのではなく、課題や目的を共有するための横断的なチーム編成をすることです。何もしないままだと各部署の横の連携が取れず(その隙間にある)課題が置き去りになりかねない。大事な仕事はチーム編成により横串を入れるように心がけています。
また、僕らの組織は復興のステージごとにきめ細かく対応することが求められています。被災者支援だって最初は避難所、仮設住宅、次は恒久的な災害公営住宅。災害公営住宅に入ると今度は入居者の孤立が問題になってくるので見守り、コミュニティづくり、生きがいづくりなど、その時々に応じた課題に対応していく柔軟性が必要とされます。〇〇局長とか〇〇課長と、個別に名称をつけてしまうと、それにとらわれてしまいます。ですので、新たな課題にも柔軟に対応できるよう、単に統括官、参事官という名称としています。
Q:復興庁が上げてきた成果と、思うように進んでいない課題は何でしょうか?
被災地を「地震・津波被災地域」と「原子力災害被災地域」という言い方で区分しています。地震と津波で被災した、特に岩手県・宮城県では、災害公営住宅の整備とか道路・港湾などのハード事業はめどが立ってきており、来年度いっぱいでほぼ完成しますので、総仕上げの段階にきております。 一方で原子力災害被災地域、すなわち東京電力福島第1原発事故で放射線被害を受けた地域はまだ道半ばです。面積でいうと、避難指示が出された地域のうち約7割方がもう避難指示解除になっています。しかし、発災時に8万8000人くらい住んでいたのが、まだ1万3000人くらいしか戻っていない。