消えぬ地デジ難民(上) 自主運営の組合、大幅赤字に苦慮 移行から約14年、山間地などにはいまだに「地デジ難民」存在 「高齢者は地上波放送が日常の情報源であり、娯楽」
2011年に地上アナログから地上デジタル放送へ移行した。14年ほどが経過したが、全国の山間地などには地上波放送の受信が困難な「地デジ難民」世帯(難視聴地域)がいまだに存在する。埼玉県北西部に位置する小鹿野町は、人口約1万人の25%ほどが自宅に電波が届かない地デジ難民だ。三山河原沢、藤倉、上薄、小森の町内4地区(計約500世帯)の各組合は、自主運営で山頂アンテナからケーブルで各家庭にテレビ信号を配信。毎年大幅の赤字で運営が立ち行かない状態が続いており、同組合員は「住民たちが運営せずとも、テレビが見られる環境を」と訴えている。 消えぬ地デジ難民(下) 災害発生時の情報源 町の補助で賄いきれず インターネットの光テレビ視聴への切り替え検討も「テレビ視聴を諦める住民が出てくる可能性がある」
総務省の資料によると、デジタル放送には地形などの影響により電波が弱くなる地域では急激に受信できなくなる性質がある。アナログ放送は辛うじて受信できても、デジタル放送を受信できない地区が中継局から遠い山間部などの一部地域で生じる。 全国各地に点在する難視聴地域の住民は主に、電力会社の共同受信施設の運営を地元組合が引き継いだ「自主共聴」や、NHKと地元組合が共同で設置・運用を行う「NHK共聴」の施設を介してテレビを視聴している。23年6月時点で、全国に自主共聴は約9700施設、NHK共聴は約5300施設ある。 小鹿野町の同4組合は、09年に東京電力の共同受信施設の譲渡を受け、地元住民で運営を始めた「自主共聴」。三山河原沢地区テレビ共同受信組合長の黒沢巧さん(74)は「これほど運営が厳しくなるとは思ってもいなかった」と切実に語る。4組合は東電から預かった約10年分の設備管理費と、地区住民から徴収している月500~千円の会費で運用を賄っているが、各組合の赤字額は毎年100万円を超えているという。
「受信施設は昭和の年代物で、受信トラブルの対応費や修理費は年々増すばかり。少子化による組合員の減少と日常の保守点検にかかる固定費が運営費を圧迫している」と、三山河原沢地区副組合長の山口繁さん(74)は説明する。毎年の赤字は、設備管理費から補填(ほてん)して運営を維持しているが、「管理費がもうすぐ底を突き、いつ組合が解散してもおかしくない状況」という。 小森地区は23年度以降、会費を月500円から800円へ、藤倉地区は22年以降に千円へ引き上げて、「自転車操業」を続けている。藤倉地区は受信施設の立地上、自主共聴とNHK共聴の組合に分かれており、費用負担の地域間格差が顕著だ。「NHK共聴の組合員は設備補修費、電柱利用費、電気代、保険代などの費用のほとんどがNHKによって補填されているが、自主共聴の組合員は一切の費用を負担している。自前の施設がなくてもテレビが見られる環境を整え、組合を解散したい」と、藤倉地区組合長の岩崎勝治さん(67)は望む。
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