英国アカデミー賞(BAFTA)で起きたドラマを一挙総覧
ハリウッド・スターの英国リスペクトぶり!
ロザムンドの嘆きももっともなくらい、ハリウッドスターのノミネートが多かったけれど、授賞式で英国リスペクトを披露するスターも少なくなかった。『哀れなるものたち』(’23)で最優秀主演女優賞に輝いたエマ・ストーンは、受賞スピーチでビクトリア時代のイギリス英語をコーチしてくれたダイアレクト・コーチにお礼。『オッペンハイマー』(’23)で最優秀助演男優賞を受賞したロバート・ダウニーJr.は、「15歳の時はピーター・オトゥールになりたかった。25歳でリチャード・アッテンボロー監督とアンソニー・ホプキンスと仕事をした。35歳になってようやく、ホプキンスの方がオトゥールよりもいい見本になるだろうと言ったディッキー(アッテンボロー監督)の言葉が理解できた。42歳の時にガイ・リッチー監督と組み、ハリウッド対策をイギリス風に作る手法を学んだ」と自分史を交えて、イギリス映画界を礼賛!
さらに『The Holdovers』(’23)で悲嘆に暮れる母親メアリーを演じ、最優秀助演女優賞に輝いたダヴァイン=ジョイ・ランドルフに至っては、女優としてのキャリアをウエスト・エンドの舞台でスタートさせている。彼女はオックスフォードにある演劇学校で演技を学び、ナショナル・シアターで『戦火の馬たち』(’12)を見て、女優を目指したという経歴だ。ちなみにプレゼンターとして登場したキーガン=マイケル・キーは、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(’23)でマスターした英国アクセントを貫いたものの、イギリス人のフリにしか見えないのがコメディ俳優の辛いところ?
「追悼」コーナーで抜群の歌唱力を披露したハンナ・ワディンガム
2023年に惜しくもこの世を去ってしまった映画人たちを讃える「追悼」コーナーに「フレンズ」シリーズで人気を得たマシュー・ペリーが選ばれなかったことが物議を醸したものの、このコーナーに関しては異論もお約束。授賞式関係者も限られた時間でどの映画人を偲ぶのかに頭を悩ませているのだから。それよりも今年の目玉は、「テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく」(’20~)で演技力を高く評価されたハンナ・ワディンガムだった。コメディ女優の印象が強くなったけれど、4オクターブの声域を持つ彼女はミュージカルでも活躍していて、昨年12月にアルバム・デビューしたばかり。「追悼」コーナーで披露した「タイム・アフター・タイム」からもその実力がわかるはず。