「ナースのお仕事」のおかげで病院に行ってもよくしてもらえる――観月ありさが振り返る30年
自由を奪われ、管理されることを恐れた10代。それでも、時代には勢いがあり、おしゃれで豪快な業界の大人たちには、大きな影響を受けたという。20代になると、一般社会の友人たちと、ごく普通の付き合いをするようになった。 「大学生や、社会に入ったばかりの友人たちと、カラオケボックスに行ったり、居酒屋で飲んだり。みんな私のことを芸能人扱いしないから、すごく気が楽でした。今と違って、携帯もSNSもなかったから、誰かに写真を撮られて拡散されることもないですしね。演技の勉強になっていたんですよね。同世代の子の出産体験や、研修医の友人のリアルな苦労話を聞いたり。友達が友達を呼んで、いろんな人たちとつながることで、芸能界にいるだけではわからない世界を知ることができました。あのころはとにかく忙しくて、若さゆえの悩みもたくさんあったけれど、一方ですごく無鉄砲で、自由だったなあと。なんだかまぶしく思えます」
30代に入ると徐々に、自身の精神年齢と、求められるものとのバランスがとれてくることを実感した。失敗を恐れず、何にでも挑戦したいという気持ちが強くなっていく。 「10代のころなんかは、『観月ありさ』はこの衣装は着ないでしょ、とか、絶対にこうじゃなきゃいけないというのが強かったんですけど、20代に入ると、こだわりの部分は、少しずつ割り切れるようになってきて。逆に、自分のイメージを壊していくのが楽しくなりました。だんだん『まあ、いっか!』って、開き直りのような。そこからの30代、すごい攻めの態勢だった気がします」
芝居では、違う人格についてずっと考えて過ごす
モデルは自然にこなせる仕事で、音楽は新鮮……そう語った観月だが、世の中で一番イメージが大きい「俳優」は、どんな位置づけなのだろう。連続ドラマ主演記録は現在30年にも及ぶ。 「お芝居は……一番疲れる仕事、かな(笑)。例えば一つのドラマに入ると、3カ月間くらい、その役、つまり私とは違う人格について、ずっと考えて過ごすことになるんですよ。『私はカップをこう持つけど、この人はきっとこう持つだろう』とか、『こういうふうに座る人かもしれない』とか…そういうことばかり考えるんです。あとは、すごく人のことを観察しますね。『ナースのお仕事』の朝倉いずみという役をやったとき、新人らしい無邪気な感じを出したくて、子どもの動きを研究しました。そういうことを日常でも考えながら、役を一つずつつくっていくんですよね」