福島を代表するラーメンの名店! 白河「とら食堂」が一流である証とは?
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。 山本益博のラーメン革命!
東京から北上する東北本線のラーメンで、栃木といえば「焔」、宮城と言えば「五福星」だが、福島を代表するのが、白河の「とら食堂」であることに異論を唱える人はいまい。ところが、クルマで出かけない限り、かなり手強い場所にある。 東京からだと、新幹線で新白河まででて、東北本線に乗り換えて白河まで行く。そこから、さらに、タクシーかバスに乗る。このバスが、「とら食堂」で食べて戻るには、1便ずつのチャンスしかない。タクシーででかけるにしても、往きはよいよい、帰りはこわい、である。
1年ほど想いを焦がしていたら、助け舟が出て、群馬、舘林に住む仲間のIさんが、舘林からクルマで連れていってくださるとのこと。朝早く起きて、舘林まで行き、「とら食堂」に30分前には着くことを計算して、東北道を北へ進んだ。約2時間後、店は自然に囲まれたなかに堂々とあった。広い広い駐車場にはトイレも用意されていた。 玄関入り口の番号札のシートをとると、すでに10番。ラーメンを食べるのに、何カ月も何年も先になることがない代わりに、行列に並ばなくてはならない。「スープがなくなり次第、売り切れとなります」以外は、並べば目的のラーメンにありつける。ラーメンは、どの料理より「自由、平等、博愛」なのである。クルマの中で待つこと30分。見る見るうちにクルマが増え、開店時間となった。番号で呼ばれ、晴れて一巡目で入店となった。 ほとんどの人は「ワンタン麺」を注文しているが、私は、自分の原則に従い、初回は、スタンダードの「中華そば」。
「とら食堂」の人気の秘密は、手打の麺にある。手ごねして、竹竿を使って、独特の艶と弾力のある麺を生み出している。食べると、この縮れ麺と鶏スープの相性がまことによろしい。具は、チャーシューにメンマに青味に刻んだねぎ、それにナルトと海苔、とても古風ないでたちで、若い客に媚びを売るようなところがないのが素晴らしい。 仲間のIさんが注文した「ワンタン麺」から、ワンタンのお福分けをいただいた。美味しいが、例えば、ワンタンの皮を餡のところだけにして、余分なところを取ったらさぞ美味しかろうと思われた。これだけは、横浜中華街の「清風楼」の「上わんたん」にかなわない。