断片的でオーウェル的な軍国主義|週末に読みたい海外メディア記事4本|2024.3.9-3.15
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今週もお疲れ様でした。米連邦議会下院本会議で動画共有アプリTikTokのアメリカ国内での事業売却を求める(180日以内に売却しなければ利用を禁止)法案が可決され、上院での審議の行方は不透明ながら、ジョー・バイデン大統領は「上下両院で可決されれば署名する」意向とのこと。大統領選を視野に入れたバイデン陣営はつい先月にTikTokアカウントを開設したばかりで、迷走の印象は否めません。 この迷走は今に始まったものでもなく、昨年3月に下院外交委員会が同様の法案を可決したもう一つ前、2020年にも当時のドナルド・トランプ大統領がバイトダンス(TikTokを提供する中国企業)との取引を禁止する大統領令に署名するという山場がありました。この大統領令はバイデン政権で撤回されたわけですが、では今回のトランプ氏のスタンスはと言えば、法案に反対しています。その理由は「TikTokユーザーの間ではバイデン氏よりも自分の方が人気があるから」。バイトダンスによるトランプ陣営への働きかけは活発で、目下のバイトダンスの狙いは「2025年にトランプがホワイトハウスに戻ってくるまで事態を先送りすること」なのだと、英フィナンシャル・タイムズは本日付の深掘りレポート「The Big Read」欄で伝えています( The battle over TikTok )。 各国で重要選挙が続く今年、SNSと政治の関係はさらに複雑かつ評価の難しいものになるでしょう。ただ、熱狂的な支持はしばしば激しい批判にも転化します。長期的な権力掌握を狙う独裁政権にとっては、むしろ社会からほどほどの無関心で接されるのがちょうどよいのかもしれません。今週の本欄は15日から始まったロシア大統領選に関する論考も選びましたが、人々の「関心(アテンション)」を奪い合うSNSカルチャーの過熱と並行して、「無関心が支える全体主義」もまた静かに力を得ていることが注目されます。
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