「路頭に迷いつつある都市」渋谷から見える日本社会の未来、カルチャーの行方とは? 社会学者の吉見俊哉さんとアーティストの宇川直宏さんが渋谷パルコで対談「渋谷半世紀」~若者の聖地の今~
「故郷の高松市の丸亀町商店街は、上層を全て住居にし、人々を住まわせ、ゆりかごから墓場までを商店街の中で実現させたからにぎわいがある。消費から生活の場に変えたことで街が息づいた。こうした取り組みを渋谷にも導入したらいい」 2人の意見は「下からの目線」による都市づくりで一致した。 宇川「川を復権させる発想は本当に大切。自分は大阪・中之島の水辺景観を生かすプロジェクトに参加しており、水都の大阪を川の側から考えるという視点でPV(プロモーションビデオ)の撮影を行っている。川の側に物流の経路が今も残っている。御堂筋などの発展している都市に物流させるために“川の道”が開けているということが面白い」 吉見「東京で自分が思うベストなルートは、日本橋から船に乗って水道橋から神田川を下り、御茶ノ水、浅草橋まで行くクルーズだ。高層タワーから見下ろす風景には皆、慣れすぎている。下から都市を眺望する経験をしてもらいたい。地形、歴史、社会を下からの目線で展望する都市づくりが大切。新宿や池袋と違って渋谷の土地は高低差がかなりある。高低差を下から見て、川筋から街を感じるのがこれからの渋谷。その川筋を活性化させていくことで、都市に残されたさまざまな歴史の痕跡が結ばれていく」
「人口減少が進む日本では、もう長期の経済成長は再来しない。経済が下降線でも、生活を豊かにする方法はある。経済中心よりも、文化を生かしていく方が、成熟への道のりは確実で、時間がかかっても多くのものがだんだん育っていく。約30年間の経済低迷の時代を経たが、その視点を持つことで、この国の未来に少しでも希望が持てるはずだ」