10万人に1人の皮膚の難病 その患者を支える“世界一やさしいチョコレート”【WBSクロス】
SDGsの中にある「全ての人に健康と福祉を」というゴールを目指し、「表皮水疱症」という難病患者のために作ったチョコレート「andew(アンジュ)」が広がりを見せています。その裏にある20代医師の奮闘を追いました。 千葉県・柏市。リビングでゲームに熱中していたのは、葛西望くん(9)。表皮水疱症という国が指定する10万人に1人の難病と闘っています。 表皮水疱症は小さな刺激で体に水疱ができて、皮膚がはがれやすくなる先天性の病気で、根本的な治療法は見つかっていません。望くんは時折頭を叩きますが、これはかゆくてもこすると皮膚がはがれるため、こうするしかないのです。 水疱は口の中にもできています。 「食べると痛いんだよね、のんちゃん」(母の敦子さん) 「飲み込めない」(望くん) 傷を回復するために十分な栄養が必要ですが、食事には苦痛が伴うのです。 「食べることは本人しかできない。本当に難しい」(母の敦子さん)
医師が起業し開発したチョコ
栄養が必要なのに、食事に苦労する人がいる。そこで立ち上がった医師がいます。都内の病院で勤務する中村恒星さん(29)です。中村さんは望くんのような患者との出会いをきっかけに、医師の給料をつぎ込む形で「スピンライフ」を起業。彼らでも食べられるチョコレート「andew(アンジュ)」を開発しました。コンセプトは世界一やさしいチョコです。 都内の工房でそのチョコは作られています。油分の多いアーモンドを活用し、溶ける温度を一般的なチョコより2度低くできました。これで表皮水疱症の患者でも痛みを伴わずに食べられるようになります。 また、抹茶や昆布など8種類の原材料を取り入れ、板チョコ2枚で1食分の栄養がとれる完全栄養食を実現。表皮水疱症の患者のかめない課題と栄養が必要という課題を同時に解決しました。こうした特徴は、他の人にもメリットがあります。 「高齢で食べにくくなった人や、がんの治療をしている人にも可能性がある」(中村さん) 実際に大腸がんを患い、抗がん剤治療継続中の40代女性で、andewを購入している佐藤さん(仮名)は「抗がん剤の副作用で口内炎がいっぱいできる時期があった。そういうときも助かっている」と話します。 このチョコレートをさらに広げる取り組みが進んでいました。一般消費者にも完全栄養食のチョコのニーズがあるはずと中村さんは百貨店「松屋」に営業へ。 「一般の人に広く手に取ってほしい。商品のバックグラウンドを知る中で、病気のことを感じてほしい」(中村恒星さん) 松屋の小泉翔バイヤーがandewを試食。反応は? 「舌触りもすごくいい。すごくおいしい。例えば今SDGs関連の商品を集めたイベントを全館で行っている」(小泉翔バイヤー) 松屋銀座は来年の春をめどに期間限定での販売を検討することを決めました。