セブン&アイ取締役は社員のほぼ千倍! みんなが知っている一般企業の「役員報酬」ってどれくらい?
役員報酬について、坂田さんは「ここ数年くらいで欧米の業績連動型が導入されてきており、株式などの非金銭報酬が大きくなっています」と指摘する。役員報酬といっても、現金だけでなく、ストックオプションなどの非金銭報酬もある。 ストックオプションとは、従業員や役員などが自社株を決められた価格で購入できる権利のこと。企業業績を向上させて株価が上がると、自社株をストックオプションの行使で購入して売却する際に、購入と売却の価格差が大きくなり、莫大な利益が得られる。ストックオプションという非金銭報酬は、業績を向上させようとする励みにもなる。 上場企業で高額な役員報酬を得ている人たちは、こうした非金銭報酬の割合が高い人が少なくない。坂田さんによると、たとえば楽天グループの三木谷会長兼社長の役員報酬1億9000万円のうち、基本報酬は1000万円にとどまっており、残りはストックオプションだという。 さらに、創業者や創業家出身の役員なら、自社株を大量に保有していることがあり、そこからの配当収入も期待できる。「会社が業績を上げて配当金を払うと、自分にも返ってくる」(坂田さん)。ソフトバンクグループの孫会長兼社長やトヨタの豊田会長などは、保有する自社株からの配当金も莫大になるとみられるため、単純に役員報酬だけが総収入になるわけではない。 大手企業の重役ともなると、他社の社外取締役などを兼務している人もいて、それらの報酬を合算すると、役員報酬総額はさらに膨れ上がる。 ◆役員報酬も格差が拡大…企業規模3千人以上の社長は8602万円、500~999人だと4225万円 多額の役員報酬ばかりに目が向きがちだが、「企業にとって大切なのはいかに従業員に還元しているのか。その働きに対する還元が重要になります」と坂田さんはみている。役員も、その一人に過ぎない。上場企業などの大企業は、優秀な人材を確保するため、役員報酬も高額になってきている。一方、中小企業は大企業ほどの余裕がなく、役員報酬も大企業と中小企業で格差が拡大していると、坂田さんは指摘する。 一般的な役員報酬はどれくらいなのか。人事院が「民間企業における役員報酬(給与)調査」を公表している。 その企業規模別の役員報酬で、全規模での平均額は社長が5196万円、会長は6391万円、取締役が2086万円などとなっている。 そのうち、企業規模3000人以上では、社長8602万円、会長9305万円、取締役が2990万円。一方、500~999人だと、社長4225万円、会長5636万円、取締役が1836万円。 この今年2月公表のデータは、全国の主要企業を対象として、常勤役員の’22年の年間報酬(給与)、同年12月分の報酬(給与)や年間賞与などを調査してまとめたもの。 会長の役員報酬が社長よりも高くなっているのは、同族経営などで、社長を退任して会長に就任しても、会長のほうが実権を握っていることが少なくないのだろう。 国税庁の調査で、給与所得者の平均給与は年間458万円で、平均年齢が47.0歳となっている。一般的な民間企業では、役員報酬の水準が従業員の数倍から10倍くらいといったところ。経営者としての責任や働きぶりが反映された数値が、それぐらいということだろう。 取材・文:浅井秀樹
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