農業の“脱”温暖化 化学肥料を技術で減らせ!【WBSクロス】
異常気象が続き、地球温暖化への対策が急がれる中、注目されているのが、農業分野の「脱温暖化」です。実は世界の温室効果ガス排出量のおよそ4分の1を占めるのが農業分野です。 その要因の一つが、収穫量を増やすために欠かせない化学肥料ですが、今、この化学肥料を削減する取り組みが各地で進んでいます。現場を取材しました。 埼玉県・杉戸町。一面に広がる水田では稲が順調に成長しています。 コメ農家の山﨑能央さんが見せてくれたのは、今田んぼで使っている化学肥料です。化学肥料は、土の養分を高める一方で、肥料に含まれる窒素成分から発生するガスは、二酸化炭素のおよそ300倍の温室効果があるとされています。 「肥料がないと育たないが、窒素成分を減らして収量をあげる努力をしている」(山﨑さん) そこで山﨑さんが始めた取り組みが化学肥料の“適正化”です。 「多収穫、たくさん取れるコメの品種。肥料の適正化が行われているので、色むらが全然ない」(山﨑さん) 化学肥料の適正化、つまり肥料の使用量を減らした水田では、必要なところに必要な分だけ肥料を使っているといいます。一方、隣の水田ではこれまで通り肥料を均一に散布。適正化を行った水田と比べると、稲の成長にばらつきがあるのがわかります。 「今までは均一に肥料をまいて、無駄もたくさんあった。必要な分だけをしっかりまいて、収穫量をあげていくという考え方」(山﨑さん)
どうやって肥料の無駄を見分けるのでしょうか? この日、山﨑さんの水田にやってきたのは、ドイツに本社を置く世界的な化学メーカー「BASF」の関根真樹さん。手に持ったタブレットと水田を見比べています。 「田んぼがどのような状態になっているか、誰でもわかる形で『見える化』するツール」(関根さん) 見ていたデータの一つが、コメの育成を予測するマップです。 田植え前の5月の状態を示したものですが、「土の養分が少ない」と見られるところは、色が薄く、「よく育つ」とみられるところは濃くなっています。このデータをもとに、必要とされる箇所にだけ化学肥料を集中的にまきます。その結果、7月上旬の育成状況を示すデータでは、稲が均一に育っていることが見てとれます。 山﨑さんの水田では、2年前からこのシステムを導入したところ、化学肥料の使用量が減っただけでなく、米の収穫量が15%増えたといいます。 「長年の経験プラス(水田の状態の)『見える化』がされることによって、より良く農業経営が前に進むようになった」(山﨑さん) このシステムを開発した「BASFジャパン」を訪ねました。 「過去15年の衛星データを使って、担当者が解析をしている最中です」(「BASFジャパン」アグロソリューション事業部の野田信介事業部長) 解析しているのは、人工衛星が撮影したデータです。契約する水田周辺の衛星写真を使い、AI(人工知能)が育成状況を解析。このデータを毎日蓄積することで、作物の成長が遅い箇所などを見分けていくといいます。 「15~20% 化学肥料を削減できる。必要なところに必要な分を使うことで温暖化の軽減につながっていく」(野田事業部長)