スマートフォン市場の中でも特殊な"立ち位置”、京セラが「タフネス特化」で成熟したスマホ市場に挑む、TORQUEブランドに問われる真価
■法人とコンシューマーの均衡戦略 アウトドア愛好家向けのスマホに見えるTORQUEだが、もう1つの顔がある。実は、法人向けとコンシューマー向けの出荷比率が半々となっているのだ。 法人向けTORQUEモデルは、その高い耐久性と信頼性から、さまざまな業界で幅広く活用されている。主な用途としては、建設現場での利用が挙げられる。過酷な環境下でも安定して動作するTORQUEは、現場作業員の重要な通信ツールとなっている。
また、運送業界でも重宝されており、ドライバー用のナビゲーション機器として使用されている。例えば、ヤマト運輸やマクドナルドのデリバリーサービスなどで採用されているという。警察や消防などの公共サービス部門でも活用されており、緊急時の通信手段として信頼性の高いデバイスとして評価されている。 京セラの通信事業部門は2024年度から法人部門に特化する方針を示している。しかし、TORQUEは例外的にコンシューマー向け市場も維持することが決まっている。
TORQUEは、コンシューマー向けと法人向けの両方のニーズに応えるため、製品ラインナップを分けて展開している。特に法人向けには、傷が目立ちにくい塗装レスモデルを提供している。このモデルは長期使用に適しており、コスト意識の高い法人ユーザーのニーズに応えている。 「通信事業部は法人向けに注力していますが、TORQUEについてはコンシューマーを意識して開発しているのは変わりません。次の10年、20年と長く愛されるブランドでありたい」と伊東氏は語る。
この両立が、TORQUEの強みであり、同時に継続的な課題でもある。変化し続ける市場環境の中で、TORQUEがどのように進化を遂げ、ユーザーの期待に応えていくのか。10周年を迎えた今、TORQUEブランドの真価が問われている。
石井 徹 :モバイル・ITライター