子育ては赤ちゃんの匂いが誘発している? 養育行動との関係性
皆さんは子どもの匂いをクンクンと嗅いだことはありますか? 子育て経験者ならば、我が子の匂いを意図的に嗅いだことがあるという人も多いと思います。 では、なぜ嗅ぐのでしょう? 赤ちゃんの体のどの部分を嗅ぐのでしょう? もとより子どもの匂いを嗅ぐのは一般的なのでしょうか? 東京大学大学院生物化学研究室は昨年、子育て経験のある人たちに調査し、検証を行いました。 そもそも、赤ちゃんに授乳したり、身体をきれいにして保温したりといった、親が子どもを育てるための「養育行動」は、何によって引き出されているのでしょう? これまでの研究では、赤ちゃんの姿や表情、泣き声などによって引き出されると考えられてきました。つまり、赤ちゃんが発する、視覚や聴覚に訴える刺激によって養育行動が引き起こされているというのです。こうした研究報告はたくさんありますが、匂いについては養育行動との関連性の報告はほとんどありません。 これは少し驚きでもあります。私自身、我が子とふれあう時、乳幼児期に発せられるあの特有の匂いをクンクンと嗅いだ経験があるからです。今回、ご紹介する研究では、匂いと養育行動に関連性はあるのか迫ったものなのです。
「頭」「お尻」など6部位に関して質問
「赤ちゃんの匂いに関する体験は、例えば、ママたちの間で『いい匂いがする』『実はよくクンクンしている』といった会話が交わされることがありますが、そうした経験をしている人が、実際にどのくらいいるのか、データがありませんでした。それを系統立てて調査したというのが意義だと思っています」。研究チームのグループリーダーを務めていた岡本雅子特任准教授は話します。 こうした調査で重要になるのは、調査項目の選定です。匂いを嗅いだエピソードの収集や複数の専門家による客観的な評価などのプロセスを経て、回答者が質問の内容を理解しにくいものや十分な回答数が得られそうにないものなどを削除・修正して、最終的に、「わが子の頭の匂いを感じて、いい匂いだと思った」など頭や額といった6部位に対する44の調査項目(図1)が完成しました。 この調査の狙いは、養育行動と関係のある体の部分と匂いを探すことだったため、体の部位別に質問をしているところが特徴となっています。調査にあたって、回答者には研究の意図は明確に示されていました。