「ディオール」の“闘うお嬢”にキュン、「サンローラン」のシースルーに物議 2024-25年秋冬パリコレ取材24時Vol.1
1年を通して同じテーマを探求する「マメ クロゴウチ」は今季も引き続き、「破片」を意味する“フラグメント”がテーマ。ただ、前回が「初期伊万里」だったのに対し、今回は同じ佐賀県で16世紀後半に開花したという「古唐津」が着想源になっています。コレクション全体のムードも異なり、繊細で涼しげなイメージだった前回に対して、今回は力強さや素朴さが漂います。特に印象的だったのは、黒河内さんが土本来の色と考えるグレーのグラデーションや、窯中の炎を想起させるオレンジやテラコッタの色使い。生地の美しさを生かすための削ぎ落とされたシルエットの上に、焼き物に見られる質感や模様を再現しています。
例えば、朝鮮唐津に見られるグラデーションは、「陽刻(陶工が柄を浮かび上がらせるために用いる技術)」のエンボス加工による再現を施したデニムに有松の絞り染めの技術を応用してのせたり、モヘアニットの編みで表現したり。絵付けのような模様はジャカードやコード刺しゅうで描き、初めて見たときに「毛足の長いコートのように見えた」という斑唐津のオーロラのような艶やかな色はアルパカウールをむら染めした後に起毛し、コクーンシルエットのコートに仕上げています。
現地取材の醍醐味は、やはりショー直後にデザイナーから直接説明を聞けること。コレクションの背景やメッセージについての理解が深まるのはもちろんですが、特に「マメ クロゴウチ」では自分の知らない日本の職人技術に対する学びや驚きもあります。今回特に面白かったのは、陶器にひびのような模様をつける「貫入」を再現するシルクウールの染色技法に関する話。生地の上に塗った蝋を乾燥させてひび割れを作り、そこに染料を入れていく蝋けつ染めと同じようなプロセスではあるのですが、海外のラグジュアリーブランドもクライアントに抱える職人は、サステナビリティーの観点(蝋は洗い落とすときに石油由来の洗浄剤を使う必要があるそう)から、なんとすり潰した餅米を使っているといいます。確かに鏡餅とかも時間が経つと、ひび割れますもんね。