球児の2年4億円は高いか、安いか。
メジャーから凱旋後、四国アイランドリーグplusの高知でプレーしていた藤川球児(35)の阪神への復帰が決まった。入団会見が24日、大阪市内のホテル行われ、藤川は、入団に至る経緯としてファンと阪神の情熱に心が動いたことを涙ながらに語り、「僕が戻った一番は(優勝)パレードをしたいということ」と熱い決意で結んだ。だが、今回の球児の阪神復帰で、違和感を覚えたのは、阪神との契約合意の段階で推定2年3億円と球団サイドから漏れ伝わっていた金額が、いつのまにか、“しれっ”と2年4億円に変更されていたことである。しかも、関係者を取材すると実際は、4億円ではなくプラス数千万円だという。 藤川の獲得に熱心だったヤクルトのオファーが2年で1億2000万円前後とされているから、約4倍の破格契約である。メジャー時代に、右肘を痛めてトミー・ジョン手術を受け、四国では連投せず、完全復活と受けとられるピッチングをまだ続けては見せていない藤川に対して、この値段は果たして適性なのだろうか。 レンジャーズを退団した藤川は、この5月に一度は、阪神からの復帰オファーを蹴ってノーギャラで“ふるさと”高知で投げた人だ。金銭的なものより義理人情や気持ちの部分を大切にしているプロフェッショナルである。会見後には「一番足を運んでくれたのがタイガースだった」と語った。 4億数千万円という数字は、藤川自身が、古巣復帰の条件として強く望んだものでもなく、“敏腕”代理人が、阪神との交渉テーブルにおいて引っ張りだしたもの。代理人がクライアントのために、あの手、この手で1円でも多く条件を吊り上げようとするのは当然の仕事。さらに他球団との争奪戦となると価格は急騰する。今回、ヤクルト、中日らが藤川に興味を示した。だがその金額は、総額4億円を超える争奪戦になるようなものではなかった。代理人が最高の仕事をしたともいえるが、阪神は5月にオファーした金額をなぜ大幅アップさせたのだろうか。四国での登板を見て、かつてのストッパー時代の活躍を期待できると踏んだのだろうか。 阪神では1億円を超える決裁は、タイガースの取締役会の承認が必要とされている。現在のタイガースの取締役会とは、あくまでも形式上のもので、実質は、坂井オーナーの決裁である。坂井オーナーが、どういう考えで、「2年4億数千万円」という金額を最終的に承認したのかを知るよしはないが、金本新監督が「(期待は)大きい」と言うほどの、せっかくの補強が、下手をすれば、チームにとってプラスどころか、チームを内側から分解させる“爆弾”となってしまう危険性がある。