どんな最期を迎えるのか少し怖い…日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』 今後のカギを握る登場人物とは? 前半の見どころを解説
物語を引き立てる神木隆之介の相棒力
そして、このドラマの中心にいるのが、神木隆之介。軍艦島パートは、誠実な「荒木鉄平」、現代パートは鬱屈したホスト・玲央という、両極端の性格を演じているが、二役だということを忘れてみてしまうほど自然だ。 神木は、隣に誰が来てもしっくりくる不思議な佇まいがある。親友の賢将といるシーンでは、神木自身の持つ純朴さとともに、賢将を演じる清水尋也の神秘性が際立つし、兄の進平といるシーンでは、神木自身の愛され度とともに、進平を演じる斎藤工の色気が際立つ。 そのほか、池田エライザのカリスマ性、土屋太鳳の美しい野心、杉咲花のけがれなさ…。すべて、神木自身のいいところを出しながら、相手役の魅力もちゃんと引き出す。 同世代だけではなく、50以上も年の離れた宮本信子さえも、彼が横に座れば、可憐な魅力が前に出て名コンビ化するのである。神木がステージの真ん中に立ちつつ、同時にスポットライトとして機能もしているようなイメージ。きっと彼が出演する作品が当たる確率が多いのは、この周りを輝かせる「相棒力」もあるのだろう。 以前、菅田将暉がパーソナリティーを務める「菅田将暉のオールナイトニッポン」で仲野太賀と神木隆之介がゲストに登場した際、菅田が神木について「興行収入ハンター」と紹介。 神木がかかわった映画の多くが素晴らしい興行成績を上げていることに触れた。あまりのすごさに仲野が「こいつ、キモくね!?」と愛あるツッコミをしていたが、いやもう、まさに「すごい」の上をいく表現として「キモい」を使いたくなるのも頷けるのである。
軍艦島繁栄の象徴・鉄平(神木隆之介)と閉山の象徴・古賀(沢村一樹)
神木が軍艦島パートで演じる鉄平が、長崎大学卒業後、端島に戻り炭鉱の職員として働き始めるのと、端島が全盛期(1960年代)へと向かうのは同じタイミング。つまり、このドラマにおいては、鉄平は端島繁栄のキーマンであり、彼の幸せは端島の繁栄と比例する。 だからこそ、1974年閉山という歴史を考えると、彼が、どんな最期を迎えるのか、少し怖い。現代パートのいずみ(宮本信子)を見ても、あまり幸せなものでないことが感じ取れる。 逆に、閉山のキーマンは、その衰退の未来をすでに知っているような、新炭鉱長の古賀(沢村一樹)。彼がどう動くのか、目が離せない。 【著者プロフィール:田中稲】 ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。 いづみを演じる宮本信子の美しさ、知性的な雰囲気は、資生堂化粧品「プリオール」のCMでも常々感じていたが、いやはや、79歳には思えない。玲央の部屋に押し掛けるときの、インターホン越しの「来ちゃった♪」の笑顔のなんと可愛いことか。 いづみは、百合子なのか、朝子なのか、それともリナなのか――。 「リナ」が偽名っぽいので、リナのようにも思えるが、あえて、3人のうち、誰でもない説に手を挙げたい。もう一人、5人を見守るメインキャラがいる…かも? 『VIVANT』(2023、TBS系)でも、第4話でやっと松坂桃李が登場したことだし、隠しメインキャストがいてもおかしくない。 まだ3回が終わったばかり。軍艦島の全盛期はしばらく続く。高度成長期をギュッと凝縮させたような、1つの世界を見守ろう。
田中稲