長野から広まるヘーゼルナッツ栽培 〝学校〟がノウハウ伝授 国産化で「世界一」目指す
イタリアへ何度も通い、自らも体験して得た栽培・加工・販売のノウハウをマンツーマンで教える〝ヘーゼルナッツ学校〟を令和5年7月に開校した。中でも力を入れるのは収穫後に生産者自身が行う「加工」だ。
ヘーゼルナッツは加工を前提とした農作物。岡田さんによると、成木1000本から取れる約5トンの実は、殻付きのままでは価格が約400万円にしかならない。しかし殻を割って焙煎、粉砕し、粉末や粒状、ペースト状の高級製菓材料にすると、2000万円以上が見込めるという。
「国内ではヘーゼルナッツの製菓材料が1年間に少なくとも1万トン消費されているといわれている。そのほぼすべてが輸入。これが国産に変わるだけで日本の農家の収益になる」と岡田さんは力説する。
■行政も後押し
行政も一定規模以上のヘーゼルナッツ栽培を補助金という形で後押ししている。長野県安曇野市は令和2年にヘーゼルナッツの苗木購入に初めて補助金を支給し、その後も継続。長野市は今年度新規事業としてヘーゼルナッツの産地化を目的に苗木購入の補助事業を導入した。
長野市には10月17日までに、16人から計約220万円分の補助金支給申請があった。市農業政策課の担当者は「苗木を植えるシーズンは冬から春なので、申請はこれから増えるとみている」という。
10月26日には長野市主催のイベントで、荻原健司市長と岡田さんらが登壇して「新たな果樹-ヘーゼルナッツの可能性」と題するパネルディスカッションを開催。農業関係者らに農作物の新たな選択肢としてアピールした。
岡田さんは「日本人の感性の品質管理で作ったヘーゼルナッツ(製菓材料)は、イタリアを超えて世界一になるはず。日本の超一流のパティシエ(洋菓子職人)が使う日本産ヘーゼルナッツは、やがてアジア、世界へ輸出される時が来る」と自信を深めている。(石毛紀行)