2020年世代唯一の"高校日本一キャプテン"が、大学で選手宣誓に込めた思い「これしか出てきませんでした」
「人間的に強くなれた」と振り返るコロナ禍
中京大中京に入学した印出は、「実力のある選手がそろっていた学年」(高橋監督)の中でも早々に頭角を現した。1年夏から一塁手として出場し、2年春から正捕手になっている。ただ、甲子園出場には届かなかった。 「1学年上にも実力のある捕手がいたので、印出の正捕手起用は大きなチーム改革でした。2年夏はまったく打てなかったし、本人も悔しかったと思う。でも、そういう経験のすべてを肥やしにできる選手でもあるんです」 高橋監督の期待に応えるかのように、印出は新チームの主将となり「4番・捕手」としてグイグイとチームを引っ張った。秋季愛知県大会、東海大会を制し、明治神宮大会でも明徳義塾(高知)、天理(奈良)、健大高崎(群馬)を下して「秋の日本一」に輝いた。そして「すごくいい形で」冬の練習に入り、いよいよ野球シーズンを迎える段階になって、新型コロナウイルスという未知の経験に遭遇することになった。 「あのときの苦労、悔しさは忘れられません。キャプテンとして、あれほどやりづらい状況はありません」 当時の話題になると、印出の声のトーンも沈みがちだ。 「だけど、人間的には強くなれたと思います」 この前向きさも、リーダーとして欠かせない資質だろう。 「なんなんだよ!って当時は思ったけど、いま思えば、いい経験になった。逆に、僕たちにしかできない経験ができた。自分の中で、引き出し的なものが増えたのかな、と感じています」
試合ができることのありがたさを知っている
そうした思いをそのまま、冒頭の選手宣誓文に込めた。 「当時の悔しさ、無力感は今でも忘れたことはありません。甲子園という夢の舞台へ挑戦することすらできなかった夏から、4年。今こうして大学野球の聖地・明治神宮球場で、苦楽をともにしてきた仲間、他大学のライバルたちとともに、4年間のすべてをかけて戦えることに喜びを感じています」 試合ができることのありがたさを自分たちは知っている。だからこそ、できることがあるはずだ。 自身は秋季リーグ開幕前に、プロ志望届を提出した。そして、盤石のプレーぶりで大学最後のシーズンを送っている。
安藤嘉浩