2020年世代唯一の"高校日本一キャプテン"が、大学で選手宣誓に込めた思い「これしか出てきませんでした」
宣誓 今ここにいる多くの仲間たちは、高校生のとき、新型コロナウイルスの影響による戦後初の甲子園大会中止を経験しています――。 【写真】高校時代は中日・高橋宏斗とバッテリー、神宮大会で優勝旗を受け取った印出太一 東京六大学野球の秋季リーグが開幕した9月14日、早稲田大学主将の印出太一(4年、中京大中京)は、開会式の選手宣誓をこんな一文でスタートした。 「自分で考えました。何を言おうかと考えたとき、これしか出てきませんでした」 2020年に高校3年生だった選手を代表して、学生最後のシーズンへの誓いを立てた。
中京大中京時代は、中日の高橋宏斗とバッテリー
印出は彼らの世代が最上級生となった1年間で高校唯一の全国大会となった明治神宮野球大会(2019年11月)で、優勝旗を手にしている。現在は中日ドラゴンズで活躍する高橋宏斗とバッテリーを組んで頂点に立ち、中京大中京の主将として閉会式で受け取った。 ちなみに、当時の印出は身長183cm、体重81kgで、高橋は182cm、79kg。見た目やシルエットがそっくりと話題になったこともある。小学6年生のときに選抜チームの「ドラゴンズジュニア」でバッテリーを組んで以来、切磋琢磨(せっさたくま)しながら互いに成長してきた親友だ。 高橋は中京大中京を卒業すると、ドラフト1位で中日に入団。2年目から1軍に定着し、2023年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では侍ジャパン最年少メンバーとして世界一に輝いた。さらに4年目の今季は12勝をあげ、最優秀防御率(1.38)のタイトルを獲得している。 「宏斗の活躍はうれしいし、自分も頑張らなきゃと刺激になる」。印出は常々、そう語っている。
中学生の頃から備わっていた「キャプテンシー」
早稲田大に進学した自分自身も、2年春から正捕手となり、3年からは不動の4番打者としてチームを牽引(けんいん)してきた。主将になった今年は春季リーグで優勝して、全日本大学選手権でも準優勝。大学日本代表に選ばれ、主将として第43回プラハベースボールウィーク(チェコ)と第31回ハーレムベースボールウィーク(オランダ)の両大会で優勝を飾った。 海外遠征は中学3年夏にボーイズリーグ日本代表の一員として優勝したアメリカの世界大会、中京大中京2年冬に愛知県選抜チームの主将として遠征した台湾、大学2年夏のアメリカ・フロリダキャンプに続いて自身4度目。「ヨーロッパで野球をやる機会はなかなかない。貴重な経験になった」と言う。 選抜チームの主将は初めての経験で「若干不安もあった」というが、「4年生と3年生が12人ずつだったので、自分がジョイント役になれれば、より強い組織になれるという思いで取り組んだ」と振り返る。結果的に堀井哲也・大学日本代表監督(慶應義塾大学監督)が「戦いながら強くなっていった」と評価するように、チームをまとめ上げることに成功した。 この「キャプテンシー」こそ、印出という選手の魅力といっていいだろう。 中京大中京2年秋の明治神宮大会で優勝した際、主将として受けたインタビューで、こう語った。「優勝したことで、すごくいい形で冬の練習に入れる。もっと鍛えて、春も夏も連覇して、歴史に残る代にしたい」 印出本人に当時のことを確認したら、「調子に乗ってますね」と照れ笑いしたが、17歳でこんなコメントはなかなか発することはできないものだ。そもそも、中京大中京に入学する前にも、印出は驚くような発言をしている。 中学3年の秋、中京大中京の高橋源一郎監督(45)が、印出の通う中学校にあいさつに行った時だった。最後に「何か質問はありますか?」と言われると、印出がおもむろに立ち上がったという。 「高橋監督を日本一の監督にします。よろしくお願いします」 そう宣言して頭を下げた。 「すごい子だなあ」 高橋監督は感銘を受けたという。 と同時に、「もしかしたら誰か大人が知恵をつけたのかな」と思い、所属する東海中央ボーイズの監督に確認したが、そのような話はしていないと言われた。 「こういうことをサラッと言えちゃう子なんですよね。リーダーとしての資質が、このころから備わっていたのだと思います。そういう部分は年齢じゃないなと感じました」