かつてにぎわったアーケード商店街 なぜいま撤去が相次ぐ?
全国各地の商店街で、アーケードの撤去が相次いでいます。アーケード(天蓋)付きの商店街は戦後から昭和の時代、日本のあちこちに登場しました。雨でも濡れることなく買い物ができ、当時は「近代的」「おしゃれ」の象徴でもあったようです。それが一転、今ではアーケード付きの一部商店街は「シャッターを閉めたままの店が多い」「昼間でも薄暗い」といった不評が付きまとうことも。アーケード商店街は、これからどうなるのでしょうか。
多くは昭和の時代に誕生
お盆が明けたばかりのこの8月17日、広島県福山市の本通商店街で、ちょっとしたイベントがありました。「アート大作戦」と銘打った催しで、親子連れら約100人が路面にメッセージや絵をかいて楽しみました。メッセージの中には「本通が大好きでした」などの文字も。朝日新聞の地方版によると、商店街でカバン店を営む66歳の男性は「元旦朝市 七夕まつり 夜店 ストリート 結婚式 思い出をありがとう」と書いたそうです。 実は、この商店街のアーケードは年内に撤去されることが決まっています。全長は300メートル以上。1970年代の後半に完成しました。イベントの日、大きなイラストを地面に描いて大はしゃぎの子どもたちと違って、大人たちが感傷的になっていたのは、30年以上も慣れ親しんできた「アーケード」が消えてしまうからでしょう。 お隣の岡山県でも、アーケード撤去は進んでいます。倉敷市の倉敷一番街商店街では昨年11月に撤去が終わり、中国山地に近い津山市の津山駅前商店街のアーケードも今年春、約40年の歴史に終止符を打ちました。岡山県ではここ数年、玉野、新見、備前などの各市でアーケードが消えています。今後の計画・予定をみても、愛媛県松山市、福岡県北九州市小倉北区など多くの都市で商店街のアーケードで取り壊され、明るく、オープンな「青空商店街」に姿を変えていく見込みです。
進む老朽化と空き店舗増加
では、なぜ今、「アーケード撤去」なのでしょうか。 一つはアーケード設備そのものの老朽化です。日本のアーケード街は、多くが昭和の高度成長期に完成しました。「全天候型」のショッピング街は、当時としては斬新であり、各地の商店街が競って導入しました。ところが、建築から30年、40年も経過するうちアーケード設備は痛みや劣化が目立つようになり、デザインも古びてしまいました。古さのため豪雪に耐えられず、冬季に損壊する事例も出ています。 もう一つは、空き店舗の増加です。郊外の大型ショッピングモールなどとの競争に敗れ、商店街から櫛の歯が欠けるように店が消えてゆく例は枚挙に暇がありません。そこには、小規模・零細の商店経営に付きものの、後継者不足も折り重なっています。 中小企業庁が実施した2012年11月時点の「商店街実態調査」(8000商店街対象、回答率38.6%)によると、商店街の「空き店舗率」は全国平均で14・6%に達していました。3年前の前回調査より3.8ポイント増にもなります。3年前より「空き店舗が増えた」商店街は35.5%。地域差も激しく、四国では「空き店舗が増えた」商店街は5割を超えています。空き店舗が減らない理由を問うと、「商店街に活気がない」が最多の回答でした。 「客が郊外に取られる」から「活気がない」、だから空き店舗が増え、さらに活気を失い─。そういった負の循環を見せ付ける数字です。