JR博多駅周辺「平日しか人がいない」と言われたが、働く街から楽しむ街へ…歩行者数は平日と休日が逆転
博多駅と新大阪駅を結ぶ山陽新幹線が全線開業して今年50年を迎える。この間、JR西日本博多総合車両所(福岡県那珂川市)は乗客の安全を支え、福岡県内二つの沿線駅は、にぎわいを生み出してきた。時代と並走してきた新幹線の拠点は、これからもレールの先の夢に向かって走り続ける。 【写真】イルミネーションで彩られ、行き交う人々でにぎわうJR博多駅周辺
昨年12月中旬、JR博多駅近くの「大衆割烹 寿久」の店主・山口慎一郎さん(63)が次々と入ってくる客に声をかけた。
店は、山口さんの父・博さん(故人)と母・博子さん(86)が1969年に開いた。当時は自宅兼店舗で、周囲には田畑や空き地が点在。75年の山陽新幹線開業が近づくにつれ、槌音が響くようになった。山口さんは「店は工事関係者でいっぱい。深夜や早朝に大量のおにぎりの注文が入ることもあった」と振り返る。
77年に改築し、最大20人が入る個室も備えた。旧国鉄や民間企業の支店、国の合同庁舎など近隣で働くサラリーマンでにぎわい、「夜の社員食堂」「夜の会議室」と呼ばれた。バブル崩壊やコロナ禍など厳しい時代もあったが、山口さんは「働く人たちの拠り所であり続けたい」と話す。
山陽新幹線開業・福岡市地下鉄乗り入れでオフィス街に
人を呼び込んできた新幹線は、街の姿も大きく変えた。
九州経済調査協会が85年3月にまとめた「九州経済統計月報」によると、70年代以降、福岡市は九州市場の販売拡大拠点として中央資本の支店立地が進んだ。協会が上場企業839社を対象に83年に行った調査では、福岡市に支店を立地する理由として「東京・大阪との交通の便がよい」との回答が最も多かった。
博多駅は山陽新幹線に加え、83年には福岡市地下鉄も乗り入れた。93年に地下鉄は福岡空港まで延伸され、交通の要衝としての役割は増し、駅周辺は、サラリーマンらが行き交うオフィス街として発展した。
回遊性アップに力
そして今――。福岡市の再開発促進策「博多コネクティッド」が2019年から進む。一定の条件を満たせば、ビル建て替え時に容積率を上乗せできる優遇策で、博多駅周辺は24年3月末現在、ホテルやオフィスビル22棟が完成。10年間で20棟としていた当初の目標を既に上回った。