終戦の日 天皇陛下のおことばを振り返る 坂東太郎のよく分かる時事用語
●終戦の日
8月15日は毎年、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」(全国戦没者追悼式)の式典が政府主催で日本武道館(東京・千代田区)で行われます。天皇陛下が毎年「おことば」を述べられているのです。 「おことば」は3段落で構成されています。第1段落は式典に臨んで「さきの大戦」で亡くなった人々と遺族への悲しみの共感。2段落目が「終戦以来○年」(○の数字は年々増えていく)国民の努力で今の平和や繁栄が築かれた一方で、戦没者と当時の苦難に思いをはせての「感慨」。最後が「全国民と共に」戦没者を追悼し、世界の平和と日本の一層の発展を祈るという形です。 内容は、今上天皇による1989(平成元)年の最初のおことばから大きく変わってはいません。言い換えれば、小さな変化に陛下の何らかのご意思を読み取れるかもしれないのです。 第1段落では、最初の「尊い命を失った」が「かけがえのない命」へと変わっていきます。「かけがえのない」の方が他に代わりがないという強さが「尊い」を上回ります。1994年に初めて用いられ、2001年からはずっとです。 2段落は、「感慨は尽きない」に「今なお」が2001年から付されていて後述する2015年の変更を除いて続いています。終戦から55年以上経って、ともすれば忘れがちになるという事情を汲んだ上でのことでしょうか。その15年の変更は以下の通りです。 【2014年】 「終戦以来既に69年、国民のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、苦難に満ちた往時をしのぶとき、感慨は今なお尽きることがありません」 【2015年】 「終戦以来既に70年、戦争による荒廃からの復興、発展に向け払われた国民のたゆみない努力と、平和の存続を切望する国民の意識に支えられ、我が国は今日の平和と繁栄を築いてきました。戦後という、この長い期間における国民の尊い歩みに思いを致すとき、感慨は誠に尽きることがありません」 すなわち「国民のたゆみない努力」を「戦争による荒廃からの復興、発展に向け払われた」と具体化し、「平和と繁栄が築き上げられ」たのは「平和の存続を切望する国民の意識」であるとし、さらに「感慨」を「戦後という、この長い期間における国民の尊い歩み」へ具体的に求めているのです。戦後70年という節目ゆえのことでしょうか。 最終段落は、冒頭の「ここに全国民とともに」の「ここに」と「全国民」の間へ「歴史を顧み、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い」という言葉が1995年から加わりました。この年は戦後50年でした。そしてさらに変化したのはやはり2015年。「歴史を顧み」を「過去を顧み、さきの大戦に対する深い反省と共に」と踏み込んだのです。翌年からは「過去を顧み、深い反省とともに」という表現で継続しています。