日産とホンダの経営統合で暗躍する「経済産業省」 “負け組”同士を統合させて時間稼ぎをするだけの愚策 古賀茂明
■トヨタ車は事実上は「中国車」 トヨタは、技術で負けて、EVブランドでも中国では完全に地元メーカーに敗北してしまったが、かろうじて生き残ったEVへのつなぎであるハイブリッド車(HV)で稼いでいる。このHVもBYDなどのPHVに取って代わられるのは時間の問題だが、現時点では巨額の利益を上げているので、資金力では頭抜けた力を持っている。必然的に、金の力で遅れを取り戻す作戦をとることになる。 日本や米国ではEVなしでも競争できるが、中国ではEV抜きではすぐに淘汰されてしまう。しかし、トヨタといえども中国で売れるEVを作る力はない。自社開発のbZX4などは中国では全く売れなかった。 中国で窮地に立ったトヨタは、23年に発売したbZ3で、EVのコア技術と基幹部品の電池双方でBYDに全面依存して生産するところまで追い込まれた。24年に入ると、中国でPHVの販売が急増したが、これを受けて、トヨタがBYDの最新PHVシステム「DM-i」を採用するという報道も流れた。EVだけでなくPHVでもBYDの軍門に下るということになる。 さらに他の日本メーカーはもちろん、トヨタでさえ、EV化と一体で進むSDV化の動きにもまた完全に乗り遅れている。そして、自動運転も同じだ。この三つの車の「スマート化」の流れで出遅れたのは致命的である。また、電池でも、日本は中国と韓国の企業に敗北してしまった。 トヨタは中国企業と、BYDとの「協業」に加え、ネット大手の騰訊控股(テンセント)とAIやクラウドなどで、また、小馬智行(Pony.ai)とロボタクシーサービスなどで提携していたが、24年には、EVの頭脳であるスマートコックピットでなんとアメリカの制裁を受けているファーウェイとの協業を発表した。トヨタブランドでは売れないので、頭脳はファーウェイが動かしているということで中国の消費者にアピールしたかったようだ。 ここまで来ると、トヨタ車とは言っても事実上中国車と言っても過言ではない。 ここまで中国依存を強めながらもようやく発売されるトヨタの新しいEVが売れなければ、トヨタも中国市場で日産と同様の苦境に立たされることになるだろう。 ちなみに、苦境に立たされているのは日本の自動車メーカーだけではない。世界の既存の自動車メーカーは日本同様非常に苦しい立場に追い込まれているところが多い。 最近よく目にする、トヨタに次ぐ世界2位の独フォルクスワーゲンの工場閉鎖をめぐる労使対立に関するニュースなどがその象徴だ。