日産とホンダの経営統合で暗躍する「経済産業省」 “負け組”同士を統合させて時間稼ぎをするだけの愚策 古賀茂明
■日産とホンダの統合という「一大イベント」を操る いずれにしても、ホンダには日産統合に賭けるしかない。なぜなら、この統合の背後には、経済産業省がいるからだ。ホンダは、自社も負け組であることを認識しているからこそ、いざという時の経産省の支援を確保しようという狙いで、経産省の喜ぶ「日の丸連合」のシナリオを選んだのだろう。 「日の丸連合」は、経産省のDNAに組み込まれた本能のようなもので、彼らは、日本の大手企業の合従連衡を自らが関わって動かして行くことに無上の喜びを感じる。今も、日産とホンダの統合という「一大イベント」を操るのは自分たちだという夢とロマンに酔いしれていることだろう。 こうした敗者を集めて規模の利益を追求して復活させようというのは、過去に半導体や家電などの分野でも試みられてきた。エルピーダメモリやジャパンディスプレイが典型だ。しかし、負け組はいくつ集まっても所詮負け組でしかない。「日の丸半導体」「日の丸液晶」などという触れ込みで「日本復活」を目指したプロジェクトは全て失敗してきた。 お荷物を抱えることになるホンダには、「NO」と言う選択肢もあったが、経産省に恩を売ることにより、今後は、両者の新しい研究開発プロジェクトへの投資などに対して、経産省が音頭を取って、政府系の機関からの出資や融資、さらには政府からの直接の補助金などを注ぎ込む展開になる可能性は高いと思われる。 そして、一旦そこまで政府が介入すれば、本当の危機が来た時も、政府は救済に乗り出さざるを得なくなるというお決まりのパターンが待っている。 ホンハイなどの外資の傘下に日産が入るなどという「大惨事」は経産省の官僚たちのDNAが許さない。ただし、今回は、派手に経産省が前に出るという展開ではなかった。経産省の中にも、この統合は結局ただの時間稼ぎに過ぎず、最終的には日産もホンダも自力で生き残るのは無理だと冷静に見ている官僚も多いと思われる。 「責任逃れ」という体質は経産省に限らず、全省庁の官僚のDNAに深く刻み込まれた特性である。あくまでも民間主導の動きを経産省が裏から控えめにサポートするという形にして、失敗に終わった時の責任を軽くしようという「本能」が働いていると見れば良い。経産省が前に出てこないことが、いかにこの統合が危ないものかということを象徴しているのではないか。