平金桐、現役引退を1年延期して直面した苦労…信念を貫きたどり着いた“最初で最後の”全日本選手権の舞台で初めて舞う
12月20日から22日の3日間、大阪府門真市「東和薬品RACTABドーム」で開催される第93回全日本フィギュアスケート選手権。 【写真を見る】7歳年上の平金桐をおんぶする島田麻央 男女合わせた出場者75名のスケート人生は十人十色。若くして世界で戦うトップスケーターもいれば、予選会で壁に阻まれ続け、やっとの思いで辿り着いたスケーターもいる。 23歳の平金桐(ひらかね・きり)は、初めて全日本選手権出場を決めた。その喜びを分かち合ったのは、ジュニアの大会で全戦全勝中の島田麻央(16)だ。 そんな平金は最初で最後の夢舞台に、まもなく立つ。
一人きりの舞台で曲に合わせて踊るのが好き
東京都出身の平金は6歳でスケートを始めた。しかし、全日本と名の付く大会に出場したのは、2019年全日本ジュニア選手権の1度(17位)だけ。 そんな実績以上に、平金は東京の試合で多くの拍手を浴びるスケーターだった。 「曲に合わせて何かを表現することがすごく好きで。やっぱりフィギュアスケートは1人きりの舞台を与えていただいて、そこで大きい音楽の中で皆さんがこっちに視線を向けてくださって。その中で踊ると、自分が別人になれるような気がします」 大学最終年を迎えた2023年は今年こそは、と全日本を目指し取り組んだ。 しかし最終予選会の東日本選手権で、出場ラインに届かず8位に終わった。 「全日本に出ないで終わって、私はいいのかな」 平金はこんな風に思い、それが心残りだったという。 大学卒業と同時に引退するスケーターがほとんどだが、平金は現役をもう1年だけ続ける決断をした。
現役続行はめちゃくちゃ大変だった
現役続行は、いままでとは違う大変さがあったと語る。 「スポンサーがついているような強化選手もたくさんプレッシャーがあると思うんですけど、私レベルの選手でもいろいろな人の支えがなければ現役を続けられない。体、食事、金銭的にも、コーチのサポートも。いろいろな面でのサポートがないと続けるのですら難しい。競技をスキルをアップさせようと思ったらなおさら難しい。だから頑張ってよかったと思いましたけど、やっぱり去年の挑む気持ち以上に大変でした」 スケーターの生活は、“自分が滑ることができる練習時間”を中心に回っていく。そのため、アルバイトを探すのも一苦労なのだ。 リンクが一般営業していて練習枠がない土日に自分の練習を入れたいところだが、うまくはいかない。 「土日にできるバイトも決まっていますし、また疲れてしまっては意味がない。何のためにスケートやっているのか、何のためにバイトをするのか、自分が一番大切にしていることを見失わないように気をつけました」 そして今年10月、再びやってきた東日本選手権。悲願の全日本出場がかかった最後の試合だ。 ショートプログラムは5位と総合5位までに与えられる出場の圏内ギリギリだった。 フリースケーティングでジャンプをまとめなければ全日本への切符はつかめないが、平金はそれでも自分を見失わなかった。 「もちろんジャンプを決めないと切符はもらえないと思っていますけど、スケートは技術だけじゃなくて芸術面もある、すごくまれなスポーツ。自分がここまでスケートを続けようと思ったのも芸術面があるからこそなので、そこを忘れないで。ジャンプ、スピン、技術に固執しがちですけど、フリーではトータルで自分が魅せられる、気持ちで踊るような演技がしたいです」 10月27日、平金桐は初めて全日本選手権の切符をつかんだ。総合3位となり、表彰台の上で安堵の笑みを浮かべた。