90%の病院が活用しているが…医療機関の「Wi-Fi」利用と課題【大学教授が解説】
ナースコールシステムは、患者と看護師をつなぐ医療現場の重要なインフラです。従来はシンプルな呼び出し機能にとどまっていましたが、昨今ではAI、スマートフォン、そして次世代通信技術の導入により、さらなる進化を遂げつつあります。一方で導入には、病院内の通信インフラの整備が不可欠です。本記事では、病院に導入されうる最新技術と、それを支えるための通信基盤の整備について、医療設備の専門家であり、日本医療福祉設備協会・理事の花田英輔氏が解説します。 都道府県「残業時間」調査
ナースコールにAIを活用すると
近年、医療でのAI(人工知能)の活用が急速に進みつつあります。ナースコールシステムにもAIを導入すれば、システム全体の効率が格段に向上し、看護師の負担軽減が期待できます。 たとえば、AIは患者からのコール内容を解析して緊急度を判断できます。「胸が痛い」といった訴えがあれば、AIは緊急性の高いコールと認識し、即座に看護師に通知します。これにより、対応の優先順位が明確化され、対応の遅れや医療ミスのリスクが軽減されます。また、センサーやカメラと連携することで、患者がコールボタンを押さなくても、異常を検知して自動的にコールを発信することが可能に。転倒や呼吸困難といった緊急事態にも迅速に対応できるようになるのです。 AIはナースコールの受け手としても機能することが考えられます。すでにコールセンターで活用されている音声ガイダンスと同様に、AIが患者に「どうされましたか?」と問いかけ、応答に基づいて適切な看護師へ情報を振りわけることが可能です。これにより、AIが状況判断をサポートし、対応のスピードを高めることができます。 ただし、緊急時の最終的な判断はやはり人間の役割であり、AIはあくまで補助に徹することが求められます。AIが効率的にサポートすることで、看護師をはじめとする医療従事者は患者と向き合う時間を確保でき、より質の高いケアが実現します。 また、AIを活用した予測コールシステムは、今後のナースコールにおける革新として大きな期待を集めています。予測コールとは、AIが患者のデータを分析し、ナースコールが発生する前に看護師に事前通知するシステムです。 特にリハビリ施設や介護施設のように、患者の状態が比較的安定している環境では、AIが過去のデータから次に発生しそうなコールを予測し、看護師に知らせることが可能です。こうした仕組みを導入すれば、看護師は準備ができ、緊急度の低いコールにも効率よく対応できるようになります。 しかし、予測コールの導入にはまだ課題も多く、技術的な難度も高い状況です。現場での実装には、AIが正確にデータを解析し、適切な予測を行うための質の高いデータが必要です。しかしながら、予測コールが実現すれば、ナースコールシステムの運用は大きく変わることが期待されるでしょう。 従来は病棟ごとにコール対応が行われていましたが、AIの導入により、コールの集約と最適な振りわけが可能となります。AIが「ナースコールセンター」として機能し、緊急度や患者の状態に応じて、看護師や看護助手へコールを振りわけることができます。これによって看護師は本来のケア業務に集中でき、業務負担の軽減ができるのです。 すでに海外では「アラームマネジメントシステム」と呼ばれるAIシステムが一部の医療機関で試験的に導入されています。このシステムは、コールの緊急度を自動で判断し、対応を適切に割り振る機能を持っています。ただし、本格的な実用化には時間がかかる見込みです。緊急度の低いコールは、AIが看護助手やクラークに振りわけることで、看護師の負担軽減を目指していますが、実装には慎重な検討が必要です。現時点では導入が進んでいる施設は限られており、さらなる技術開発が求められる分野です。