SDV時代を占う自動車メーカーのソフトウェア開発 フォルクスワーゲンはリビアンと最大50億ドルの大型提携
フォードもリビアン、テスラ、アップルの技術者をEVチームに大量投入
新興EVテック企業の技術を求めているのはフォルクスワーゲンだけではない。 フォードは2023年から2024年にかけてEVの先進プロジェクトチームを300人規模にまで増やした。このうち約50人はリビアン、20人以上はテスラ、12人は資金難のカヌーから採用された。また、ルシッド・モーターズから約10人、そしてアップルが2024年2月に中止したEVチーム「プロジェクト・タイタン」からも数人を採用したという。 旧来の自動車メーカーがソフトウェア開発をするにあたっては、EVネイティブなテック企業の人材が不可欠ということだろう。
老舗自動車メーカーと新興テック企業の組み合わせはSDV時代の最適解となるか
今、自動車メーカー各社にとって、SDVに搭載するソフトウェアの開発は待ったなしの大課題だ。今年3月に包括的な協業を発表したホンダと日産も、8月に入り具体的な協業内容のひとつとして「ソフトウェアの基礎技術の共同研究」を挙げている。 長年ガソリン車としての性能や乗り心地などを追求する「モノづくり」をしてきた自動車メーカーにとって、ソフトウェア開発が異質なものであることは想像に難くない。テスラやリビアンなど、最初からEVありきでスタートしたテック企業とは、マインドセットもカルチャーも全く異なるわけで、旧来の自動車メーカーが内製のソフトウェアで戦おうとしてもなかなか難しいだろう。 今回フォルクスワーゲンは、ソフトウェアの自社開発路線を転換し、リビアンというテック企業に技術的な主導権を渡す形でソフトウェア開発を進める決断を下した。フォルクスワーゲン側は最先端のソフトウェア技術にアクセスできるようになり、リビアン側は財務体制の強化や自動車の量産ノウハウの取得が可能になるという、双方にとってメリットのある提携だ。 この提携がどれだけの効力を発揮するかは未知数だが、モノづくりに強みを持つ老舗自動車メーカーと、ソフトウェア開発に強い新興テック企業の組み合わせは、SDV時代においてとても相性が良いのではないかと思う。 旧来の自動車メーカーならではのハードウェアや乗り心地へのこだわりと、最先端のソフトウェア技術によるユーザーインターフェースや自動運転、省エネといった機能性が両立する次世代SDVの登場を楽しみにしたい。
文:平島聡子 /編集:岡徳之(Livit)