SDV時代を占う自動車メーカーのソフトウェア開発 フォルクスワーゲンはリビアンと最大50億ドルの大型提携
リビアンの黒字化と財務体制強化にもメリットのある提携
リビアンは2009年創業のアメリカ西海岸の新興EVメーカー。一般消費者向けの「R1」シリーズと、配送事業者向けのRCV(Rivian Commercial Van)という2種のEVをすでに量産化している。特に配送に特化したバンは、元々出資者でもあるアマゾン向けに「EDV」(Electric Delivery Van)として開発され、アメリカでは旧来のガソリンエンジンの配送車両が、リビアンのEVにどんどん切り替わっているという。 新興自動車メーカーのリビアンにとって、事業を黒字化するのは簡単なことではない。2021年に華々しくIPOし、一時は時価総額1,000億ドルを突破してテスラのライバルと注目される存在だったが、2023年は27億ドルの赤字を計上。アメリカの景気低迷の影響もあり、生産台数も6万台弱と足踏み状態になっていた。 そんな中で発表されたフォルクスワーゲンとの提携は、リビアンの財務体制を強固にするものとしてポジティブに受け止められ、リビアンの株価が時間外取引で49%も急騰するという動きを見せた。 今回の業務提携で、フォルクスワーゲンは2024年第4四半期に無担保転換社債を通じ、まずリビアンに10億ドルを投資予定。その後2025年と2026年にリビアンの普通株をさらに10億ドル購入する。残りの20億ドルはジョイントベンチャー事業に充てられ、初期投資と2026年の融資に分割される予定だ。
次世代SDVのスタンダードと目されるゾーンアーキテクチャを採用
リビアンは最近、次世代R1TピックアップトラックとR1S SUVの生産を開始している。今回のアップグレードでは、車両を制御するために使用するECU(電子制御ユニット)の数を、第1世代の17個から7個へと削減。各車両から2,500メートル以上の配線を削減し、20㎏の軽量化を実現したことにより、生産の迅速化が可能になった。 リビアンの新しいE/Eアーキテクチャ(自動車に搭載されたECUやセンサーなどを繋ぐシステム構造)では、ゾーンアーキテクチャを採用している。これまでのドメインアーキテクチャでは車両内の技術領域毎に別々に行われていた処理を、ドメインをつなぐ統合ECUによって情報集約、統合制御することで、部品数や開発コストの削減が可能となる。 すでにテスラもこのゾーンアーキテクチャを採用しており、これが次世代SDVのソフトウェア基盤になるだろうと予測されている。フォルクスワーゲンは今回のリビアンとの提携で、業界最先端のソフトウェアプラットフォームにアクセスできるようになるのだ。