生理がとまり20代で“若年性更年期障害”に。ストレスを緩和し3児の母となるまで
20代でぶつかった“若年性更年期障害”をきっかけに植物療法士の道へ進んだ南上夕佳さん。生理のない無排卵状態から自分に合った方法でストレスを緩和し、3児の母となった現在までの実体験を伺いました。 【画像】更年期のお悩みへアドバイス
■最初の症状は「寝汗」。20代の南上さんに起きた更年期障害のような症状 ──最初に気がついた体調の違和感は、どんな症状でしたか? 南上さん:私は4年制の大学を卒業後、ヘアメイクのアシスタントとして就職しました。同窓生の中ではかなりめずらしい進路選択をしたので、必ず成功しなくては!と意気込んでいましたし、専門学校で学んだ経験がないぶん他の人より頑張らねば、とも思っていて。もともと職種的に拘束時間が不規則なのに、さらに土日も休みなく勉強に動き回っていました。それでも、当時は好きなことを仕事にできた充実感でいっぱいだったんです。 最初の違和感は「寝汗」でした。夏場でもないのに、寝ているときに背中にぐっしょり汗をかく日が続いたんです。風邪をひいて高熱が出たときのような、イヤな汗で。寝室の空調を工夫したり、素材にこだわってパジャマを買い替えてみたり、あれこれ試しましたが改善できませんでした。 次に現れたのが「肌の乾燥」で、全身がカサカサに。顔はパックや化粧水を色々試して凌いでいましたが、手足は特にひどく、角質がポロポロと頻繁に剥がれ落ちて黒い服が着られないほど。困って皮膚科にかかり保湿剤を処方してもらいましたが、原因まではわかりませんでした。 そのうち「動悸」も経験するようになりました。緊張するような場面に限らず、自宅で過ごしているなんでもないときに、急に心臓の鼓動がドクドク高まってハッハッと息切れが起こるんです。 それから「抜け毛」も。100本は優に超える、ギョッとするような本数が指に絡まってごっそり抜けていくんです。 ──それでも、当時25歳という年齢では「更年期障害」に思い当たりませんよね。 南上さん:「何かがおかしい」とは思いつつ、どの症状で何科にかかればいいのかわからなくて。仕事が忙しかったので病院に行く時間も惜しいと思ってしまい、結局半年くらいは症状を放置してしまいました。 でも、病気ってやっぱり放っておくと悪くなっていくもので、だんだんとメンタルにも影響が出てきてしまったんです。夜眠れない日が増え、目覚めも悪くなって、仕事を休んでしまったり、仲の良い友達と会う約束でさえも実現できなかったり。人に会うこと、外出することが耐え難いほど憂鬱になってしまいました。 精神的な問題かもしれないと思い、心療内科にも相談しましたが、このとき提案されたのもやはり薬による対症療法のみで、根本的な原因究明には至りませんでした。 ■婦人科でようやく“若年性更年期障害”といわれる症状が判明 ──“若年性更年期障害”といわれる症状が判明した経緯について教えてください。 南上さん:それぞれの不調への対症療法ではなく「なぜ今つらいのか」の理由が知りたくて、次にかかったのが婦人科でした。実は学生の頃から生理不順で、遅れることもしょっちゅうだったのでさほど気にしていなかったのですが、当時は直近の生理の時期を思い出せないほど何カ月も生理が来ていなくて「さすがにまずいだろう」と。 婦人科でこれまでの症状を相談すると「それは全部更年期の症状ですね」と言われたんです。「でもまだ20代だし、何か婦人科系の病気の可能性もあるので、まずは検査しましょう」というかんじで、血液検査を受けました。 その結果、私は「FSH(卵胞刺激ホルモン)」という卵巣へ女性ホルモンの分泌を促す役割を持つホルモンの値が0.1以下と平均を大きく下回っていて、無排卵状態であることが判明。また「ストレスホルモン」とも呼ばれる「コルチゾール」の値が異常に高く、体が常に強いストレスを感じている状態であることもわかりました。 FSHを分泌するのは脳の下垂体という部分なので、診断内容は「ストレスによる下垂体機能不全」。同時に受けた婦人科の検査で卵巣や子宮には問題がなかったので「要するに、若年性の更年期障害です」と。 ──診断を受けてどう思われましたか? 南上さん:動揺しました。脳に問題があるとは思ってもみませんでしたし、忙しさによる疲労感はあっても「精神的に参っている」というかんじではなかったので、自分では気がつかないうちに体がストレスをため込んでいて、SOSを発していたという事実にも驚きました。きちんと治せるのか、将来的に妊娠できるのか......など、さまざまなことが頭をよぎりました。 当時は未婚で妊娠・出産の予定もなかったので、すぐにホルモン剤には頼らず、生活習慣を見直して様子を見ることに。仕事を辞め、食事や睡眠のリズムを整え、自分の内側を見つめる時間を作って「脱ストレス」の生活をを心がけるところから始めました。でも、なかなかすぐには回復を実感できず、肉体的にも精神的にもしんどくて。友達に相談できるような状態ではなかったので、一緒に暮らしていた両親には心配をかけました。 このまま治らないのでは......と焦る中、なにか服薬ではない自然な方法でケアができないかと検索していて見つけたのが植物療法(フィトテラピー)でした。ルボア フィトテラピースクールで得た知識をもとに自分に合いそうなハーブ(バレリアンやパッションフラワー、朝鮮人参など)をとってみたところ、数週間で体調の変化を感じ、疲れが取れて夜ぐっすり眠れるようになったんです。ようやく自分の体に合うものに出合えた!と嬉しくなりました。 ■ストレスを緩和し、生理が再開して3児の母に ──どのくらいで回復したと実感しましたか? 南上さん:ハーブの摂取を続けて3カ月後に生理が再開しました。数ヶ月に一度、薄茶色の経血が少し、というレベルの生理しかこない期間が1年以上続いていたので、久しぶりに鮮血を見た感動は、今でも忘れられません(笑)。 それから1年弱で、悩まされていた更年期症状はほとんど解消し、再度受けた血液検査でFSHが正常値まで増えていたので「もう大丈夫」と思えました。 その後夫と出会って結婚し、2019年には自然妊娠で長女を授かりました。更年期症状が治った現在も、女性ホルモンに似た作用のある「メリッサ」など体調に応じてさまざまなハーブを生活に取り入れていて、今のところぶり返したりすることはありません。生理も順調で、第2子・第3子の妊娠も生理の遅れがきっかけで気がつきました。心身ともにボロボロだった頃からは信じられないくらい回復しました。 ──20代、30代でも更年期障害のような体調不良があったら、どうすればいいでしょうか? 南上さん:やっぱりまずは婦人科での血液検査を受けることをおすすめします。私は、血液検査によって「FSHが低すぎる」「コルチゾールが高すぎる」という情報を入手できていたからこそ、その症状に合うとされる朝鮮ニンジンやエゾウコギなどニンジン系のハーブによる植物療法を選んで試すことができました。更年期障害ではなく別の病気が隠れている可能性もあるので、自分の体の状態を正しく把握することが、最適な治療を選択するための指標になると思います。 ▶「更年期障害」と似て非なる“若年性更年期障害”とは? 病態やPMSとの違いも解説! へ続く 植物療法士 南上夕佳 (なんじょう・ゆか) 1985年生まれ。20代で経験した若年性更年期障害をきっかけに植物療法専門校「ルボア フィトテラピースクール」にてAMPP(フランス植物療法普及医学協会)認定資格を取得。日本における植物療法の第一人者、森田敦子氏に師事し、同スクール副代表を経て独立。百貨店や企業で数々のセミナーやカウンセリングを行う。現在はエビデンスとともに女性のための植物療法を学ぶオンラインスクール「Femtech Institute」を主宰。 構成・取材・文/月島華子