「公害という言い方やめる」わずか10日で前言を翻した静岡市長は、前日に会社トップと面会していた
前日に会っていたのは会社の社長と副社長
なぜ、前言を撤回するような事態となったのか。 それをうかがわせる話が、会見の質疑で難波市長から飛び出した。 「昨日(5月23日)、三井・ケマーズフロロプロダクツ(MCF)さんの社長さんと副社長さんが来られて『今年はこんなふうにやっていきたい』という話をいただいています。口頭で、外に出すような資料ではないです」 なんと、会見前日にMCFトップの訪問を受け、内々に説明を受けたというのだ。 そのうえで、次のように語った。 「PFASの濃度、とりわけ三保のポンプ場のPFAS濃度を下げる努力を企業としてもしていただかないといけないので、どういうことをやるかについては発表できるものを持ってきていただきたい、というお願いをしました。早めにもってきていただくというお約束をいただきましたので、そういう状況にあります。やはり、もう少し頻繁に取り組みの状況をご説明いただくことが必要かなと思っております」 「(SlowNewsでの)インタビューでは厳しい話をいたしましたけども、それが伝わったのかどうか、昨日おこしいただきましたので。これからも良い方向で三井さんといい意見交換ができればと思っています」 私のインタビューでは、会社の責任について「(汚染を)拡散させていた事実を認めることが大事」と語り、汚染対策費の負担について「(補償も含めた)法的なところまで含めてやる可能性はあります」と踏み込み、汚染者負担の原則について「検討している」とまで答えていた。 ところが、会社トップとの面会を終えると、批判的なスタンスを一転させ、協調路線へと舵を切ったようだ。 難波市長は会見で、汚染された水の活性炭による浄化や工場内にとどめる措置が必要との認識を示したうえで、こう語った。 「工場内の高濃度のPFASを含んだ水が何かの形でまわりに出てきているはずで、それを工場内に閉じ込める努力をいろいろされていますから、それについても『こんな取り組みをする』とおうかがいしました。そういう取り組みをしているんであれば、外向けに『いつまでに、これぐらいの濃度に下げるという目標でやってる』と発表できないでしょうかということで、『じゃあ、検討します』というお話をいただいております」 MCFは住民に説明する社会的責任があるのではないか。私が連載「デュポン・ファイル」に関連してそうたずねた際、MCFは次のように回答している。 「会社方針として、正確かつ適切に情報をお伝えするため(略)記者会見も予定しておりません」 もし、このまま市民への説明が十分に行われないのであれば、汚染をもたらしたMCFと結果的に変わらない。 静岡市のホームページには、難波市長の言葉が載っている。 <社会を下支えし、一緒に走る「温かい市政」を行っていきます> 静岡市はだれと一緒に、どこへ向かおうとしているのだろう。
諸永裕司