カリスマ育種家・川越ROKAさんに聞く。「わびさび」の精神に合致した新時代のパンジー&ビオラ
『趣味の園芸』10月号のパンジー&ビオラ特集では、多くの個人育種家から敬愛されている川越ROKAさんが登場。パンジー&ビオラの育種は、ここ数十年で飛躍的な進化を遂げました。その裏には、進化を牽引し支えたROKAさんの功績があります。誌面では、次々と登場する系統の見どころから、育種のハウツーとコツまで、レジェンド育種家・ROKAさんが紹介。一部を抜粋して、お届けします。 みんなのパンジー&ビオラの写真
小さく可憐なもの、不完全を愛でる文化
パンジー&ビオラが日本にやってきたのは江戸末期。日本には同じスミレ科のスミレは広く自生しているものの、パンジー&ビオラの原種はありません。そのため、原種からの育種の歴史はありませんでした。戦後に本格的な育種が始まり、昭和は欧米の基準に沿った育種がメインでした。 それが平成になり、ROKAさんが野に咲くスミレのようなビオラを生み出し、これが日本人にとっての"原種"になりました。新たな日本的な視点での育種が始まったのです。
日本の美意識から生まれた、パンジー&ビオラの進化
「パンジー&ビオラはヨーロッパ原産で、かの地では大きく華やかな花を目指して育種されてきました。しかし、日本ではスミレの趣をもった小輪で可憐な花が好まれ、ここ数十年で独自の進化を遂げました。平成以降のパンジー&ビオラには日本人ならではの繊細な美意識が反映されてきたので、多くの人の心に響くのでしょう」 例えば、八重咲きのパンジー&ビオラ。西洋の基準による親株選びは「整った花」です。しかし、八重咲きが生まれたのは、花弁が整っていない「不ぞろいの花」からでした。 西洋の記録に八重咲きの記述はありますが、育種の歴史はありません。ROKAさんが八重咲きの育成法を発見し、種子系で完成させたのが、落合けいこさん。これは日本人の快挙です。花絵本シリーズ(上の写真) 他にも、一部の花弁が後方に反り返る「反転咲き」と呼ばれる形質も、西洋の基準では選ばれてこなかった形。「わびさび」の精神に合致した新時代のパンジー&ビオラが、日本で花開いています。