地球史上「最大の大量絶滅」を生き延びた生物が生んだ「限りなく哺乳類に近い生物」…じつに「混沌とした多様性」
長い長い進化の中で、私たちの祖先は、何を得て、何を失い、何と別れてきたのかーー 約46億年と言われる地球の歴史において、生命が誕生は、遅くとも約39億5000万年前と言われています。そして、最初の人類が登場するのは、約700万年前。長い地球の歴史から見れば、“ごく最近”です。 「子を産んで、乳で育てる」のは、いつ始まったのか?…カギはじつに「特異な生物」 しかし、そのホモ・サピエンスも、突如として誕生したわけではありません。初期生命から現在へと連綿と続く進化の果てに、生まれたのです。私たち「ホモ・サピエンス」という一つの種に絞って、その歴史をたどってみたら、どのような道程が見えてくるでしょうか。そんな道のりを、【70の道標(みちしるべ)】に注目して紡いだ、壮大な物語が『サピエンス前史 脊椎動物から人類に至る5億年の物語』です。 この『サピエンス前史』から、70の道標から、とくに注目したい「読みどころ」をご紹介していきましょう。今回は、広義では哺乳類とされることもある「哺乳形類」について、どんな動物だったのか、古生代の獣弓類との違いについての解説をお送りします。 *本記事は、『サピエンス前史 脊椎動物から人類に至る5億年の物語』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
古生代・ペルム紀末の大量絶滅事件後の地球
約2億5200万年前、空前の大量絶滅事件が勃発したとき、世界の大陸はすべて集合・合体し、「超大陸パンゲア」となっていた。 大量絶滅事件の“直前”まで、この超大陸に生きる獣弓類の一部は、全長数メートルという、 それなりに大きな体を獲得し、四肢でからだをぐっと持ち上げ、大きな顎には異歯性の発達し た歯が並び、ひょっとしたら横隔膜を備えて効率的な肺呼吸を行い、そして、内温性であることを十全に生かして、アグレッシブな狩りを行っていた(かもしれない)。 一言でいえば、陸上生態系の上位に君臨する存在になっていた(はずである)。当時、世界には獣弓類の王国が築かれていたのだ。 しかし、大量絶滅事件によって、その王国は崩壊した。約2億5200万年前を境として、私たちの祖先の仲間たちが築いてきた世界は壊滅し、新たに爬虫類を中心とする世界が急速に構築されていく。 この新たな世界で頭角を現していくのは、“ヒトに至る系譜”とは、はるかな昔に袂を分かった竜弓類の雄、「恐竜類」である。 大量絶滅事件後、恐竜時代が始まる。約6600万年前まで約1億8600万年間にわたって続いたその時代は、「中生代」と呼ばれ、古い方から「三畳紀」「ジュラ紀」「白亜紀」と名付けられている。三畳紀とジュラ紀の境が約2億100万年前、ジュラ紀と白亜紀の境が約1億4500万年前だ。 舞台である超大陸パンゲアは、しだいに分裂していく。南北に分かれ、東西に分かれ、その後、1億年以上の歳月をかけて、諸大陸に分かれていく。北のローラシア超大陸、南のゴンドワナ超大陸に分かれ、その後、ジュラ紀の間にローラシア超大陸は北アメリカ大陸とユーラシア大陸に分裂した。白亜紀になるとゴンドワナ超大陸の分裂も進み、南アメリカ大陸とアフリカ大陸が分かれる。 この分裂は、生物の“断絶”を招いた。 超大陸の分裂によって、種内の交流が断絶され、「隔離」が生じることで、各大陸に固有の生物が進化していくことになる。 さて、激変した地球にあって、ペルム紀末の大量絶滅事件を乗り越えた獣弓類にキノドン類がいる。