老齢年金「繰下げ受給」で月額10万円が18万4000円に…どのようなデメリットがあるのか
繰下げ受給のデメリット3つ
年金を繰り下げ受給する場合の主なデメリット3つを解説していきます。 ●1.寿命によっては総受給額が減る可能性がある 繰下げ受給をすると、受給額は増やせますが受給期間が短くなるため、寿命によっては総受給額が少なくなる可能性があります。 たとえば、年金月額10万円の方が80歳まで受給した場合で考えてみましょう。 65歳・70歳・75歳から受給開始した場合の総受給額は、それぞれ1800万円、1704万円、1104万円となり、65歳から受給開始したケースが最も高額になります。 75歳から受給開始する場合は、月額は高額になるものの受給期間が短いため、原則通り65歳から受給開始した場合よりも約700万円少なくなる計算です。 計算) ・65歳から15年間:10万円×180ヵ月=1800万円 ・70歳から10年間:14万2000円×120ヵ月=1704万円 ・75歳から5年間:18万4000円×60ヵ月=1104万円 ●2.加給年金・振替加算が受け取れない 繰下げ受給を選択すると、加給年金や振替加算が受け取れなくなる可能性があります。 加給年金とは、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時に、生計を維持している一定の条件を満たす配偶者や子どもがいるときに加算されるものです。 配偶者や子どもの具体的な条件は以下の通りです。 ・配偶者:生計を維持されている65歳未満の方 ・子ども:生計を維持されている18歳到達年度の末日までの間の子ども(1級・2級の障害がある場合は20歳未満の子ども) 加給年金の受取条件を満たしている方が繰り下げ受給をする場合、加給年金の受給も一緒に繰下げられます。そのため、繰下げ中に配偶者が65歳を迎えると、加給年金の受給対象から外れてしまうのです。 さらに、加給年金が受け取れない場合は、振替加算も加算されない点に注意が必要です。 振替加算とは、加給年金額の対象者になっている妻(夫)が65歳になると加給年金が打ち切られますが、その代わり自分の老齢基礎年金に生年月日に応じた加算額がつくものです。 繰下げ受給を検討する際には、ご自身が加給年金の受取条件を満たしているかどうかを確認し、損をしないように注意しましょう。 ●3.社会保険料や税金が高額になる 年金受給額が高額になると、社会保険料(介護保険料、国民健康保険)や税金(所得税、住民税)も高額になります。 保険料や税額は所得に応じて決まり、所得が多くなるほど納める金額も高額になります。 年金を繰り下げたことで受給額が増えても、社会保険料や税金がその分多く引かれてしまうと、手取り額がそれほど増えていないというケースもあるのです。 繰下げで損をしないために、繰下げるとどのくらい受給額が増えるのか、そして社会保険料や税金はどのくらい引かれるのかを試算することが大切です。 ご自身で計算するのは難しいため、年金事務所や年金相談センターで相談してみましょう。