クリスマスシーズンが本格スタート、Kバレエ トウキョウが踊り継ぐ、充実の『くるみ割り人形』開幕レポート
古典の愉しさ、作品の力をあらためて感じさせる充実の舞台
クララとくるみ割り人形、ドロッセルマイヤーの躍動感にあふれたパ・ド・トロワに続くのは、雪の国。雪の女王(成田紗弥)、雪の王(田中大智)が、熊川振付独特のスピード感あふれるコール・ド・バレエをリード、上演のたびによりパワフルな印象が増していく。バレエの舞台でここまで!?と思うほど大量に舞う雪は、本プロダクションからの観客へのプレゼントのようで、クリスマス気分は一気に盛り上がる。 世界一硬いクラカトゥクくるみを割るという使命を果たしたクララを、人形の国の人々が感謝を込めて温かく迎え入れる第2幕。呪いが除かれたお祝いとして踊られるのは、花のワルツ。本来の姿に戻ったマリー姫(日髙世菜)も加わり、クララとともに晴れやかな踊りを展開すると、劇場は華やいだ空気に。アラビア人形、スペイン人形、ロシア人形、フランス人形の踊りが連なる場面も、『くるみ割り人形』ならではの大きな見どころ。塚越恭平の指揮、シアター オーケストラ トウキョウの演奏によるチャイコフスキーの音楽は、誰もが一度は聞いたことのある名曲ばかり。下手の観覧席で、その踊りを不思議そうに眺めたり、ドロッセルマイヤーとともに振付を真似してみたり、目を丸くして驚いたりするクララの姿が愛らしい。 クライマックスは、マリー姫と、王子の姿になったくるみ割り人形のグラン・パ・ド・ドゥ。マリー姫を演じる日髙は優美で繊細、姫としての品格を自然に表現して圧巻だ。彼女にぴったりと寄り添う王子、栗山との息のあった踊りで観客を魅了、切なさと幸福感に満たされる終盤は、古典バレエの愉しさ、この作品の力を、あらためて強く印象付ける。 12月8日(日) まで、全9公演が予定される『くるみ割り人形』。主要な役柄を、熊川のもとで鍛えられた多彩なダンサーたちが日替わりで務める。マリー姫は飯島望未、岩井優花、くるみ割り人形/王子は石橋奨也、山本雅也、さらにはゲストのジュリアン・マッケイの登場も話題に。クララ役の塚田真夕、世利万葉の活躍も、目が離せない。日本をリードするカンパニーが長く取り組んできたからこその、充実の舞台だ。 取材・文:加藤智子 写真提供:K-BALLET TOKYO <公演情報> 熊川哲也 K-BALLET TOKYO Winter 2024 『くるみ割り人形』 公演日程: 2024年11月23日(土・祝) 14:00開演 2024年11月24日(日) 13:00開演 2024年11月30日(土) 13:00開演 / 17:00開演 2024年12月1日(日) 13:00開演 2024年12月6日(金) 18:30開演 2024年12月7日(土) 13:00開演 / 17:00開演 2024年12月8日(日) 13:00開演 会場:Bunkamuraオーチャードホール