ロマンスカーミュージアムも危機に? 「博物館法改正」の光と影、デジタル化時代で問われる文化施設の存続とは
交通関連の登録博物館
ここでいくつか交通関連の博物館をめぐってみよう。 鉄道系では、 ・鉄道博物館(さいたま市) ・京都鉄道博物館(京都市) が東西の“横綱”といっていいだろう。冒頭のロマンスカーミュージアム以外では、 ・地下鉄博物館(江戸川区) ・小樽総合博物館(旧小樽交通記念) がある。ちなみに、 ・碓氷峠鉄道文化村(安中市) ・リニア・鉄道館(名古屋市) ・九州鉄道記念館(北九州市) は、比較的規模が大きいものの博物館類似施設である。これら以外にも、全国には大小さまざまな鉄道関連の施設や記念館があり、数え上げればきりがない。そのくらい、地域と鉄道は密接にかかわってきたということだろう。 船舶の博物館といえば、博物館法改正で新たに登録博物館となった船の科学館(江東区)だろうか。ただ、島国の日本では船とのかかわりが鉄道よりも古く、船にまつわる展示施設や記念館は鉄道以上に多いのではないだろうか。北前船などの停泊地といった船運で栄えていた地域には、必ずといっていいほど関連施設が残っている。10月下旬にリニューアルオープンする宮城県慶長使節船ミュージアム(石巻市)は、船を扱ったテーマとしては面白い。 ・航空機を専門とする「航空科学博物館」(芝山町) ・交通全般を展示する「広島市交通科学館」(広島市) ・物流にスポットライトをあてた「物流博物館」(港区) ・街道の歴史を伝える「南木曽町博物館」(南木曽町) ・日本で初めての自転車博物館である「シマノ自転車博物館」(堺市) は、一度訪れてみたい施設だ。
安定的な維持・運営には資金の確保が最優先
博物館法の改正は、デジタルアーカイブ化の推進など博物館の質の向上に一役買う。しかしその一方で、登録博物館となるには資金や人材の確保が必要であり、小規模になるほど厳しいといえる。 施設や資料の維持に精いっぱいで、登録博物館に適合するための予算など夢のまた夢だったり、今いる職員や学芸員の待遇の改善すらままならなかったりする施設が多いのではないだろうか。博物館法の改正の意義は理解できるが、博物館運営の厳しい現状に対する答えにはなっておらず「誰得」感が残る。 上野の国立科学博物館ですら、 「我が国のコレクションとして質・量ともに世界に誇れる標本・資料の充実」 のために、クラウドファンディングを実施したくらいだ。さすがにこのクラスの博物館となると、目標1億円に対し、約5.7万人から約9.2億円の支援が集まったが、ニッチな分野や小規模になるほど集まりにくいといえよう。また、ロマンスカーミュージアムのような民間企業の博物館も、 「会社の業績」 次第では運営すら厳しくなる可能性がある。 文化芸術や科学技術の発展のために、博物館の果たす役割は大きいのはいうまでもない。博物館を取り巻く環境の改善はすぐには難しいが、筆者が最低限できることとしてこの秋に博物館に足を運んでみようと思う。
ネルソン三浦(フリーライター)