まひろを現実世界に戻した、従者・乙丸の叫びにSNS泣き笑い…オリキャラが魅力的だった『光る君へ』
目の前で大切な人が倒れる…最終回、まひろに希望の兆しは
思えばまひろは、母・ちやは(国仲涼子)が藤原道兼(玉置玲央)の狂刃に倒れる姿を目撃したことで、この世の不条理や無常を幼い頃から考え込むようになった。まひろが「人間の闇」の深淵にギリギリまで迫ろうとする、その原体験になったことは間違いない。幼い子どもにはあまりにも過酷な経験だけど、今となってはあの事件は、まひろを「紫式部」たらしめる大きな布石であり、超えるべき第一の関門だったのだろう。 では一方、周明の死はまひろになにをもたらすのか? 周明は『源氏物語』完結&道長との関係の終わりで空っぽになったまひろに、再び水を注ぎ込むような存在になると、前回のコラムで記したが、脚本の大石静はシビアにもそのルートを断ち切った。 再び灯りかけた希望を、母と同じような突然の暴力によって消されたまひろ。おそらくは彼女の人生最後の試練がなにを生み出すのかは、まだこの回では示されなかったが、最終回でまひろの・・・あるいはまひろの次の世代への、希望の兆しを見ることができるのだろうか。
乙丸の叫びにSNSは泣き笑いのコメントが殺到
このままだとまひろは、大宰府で周明のことを考えたまま朽ち果ててしまいかねなかった。そんな彼女を力ずくで現実世界へと引き戻したのが、まさかの乙丸だった。彼がひたすら「(妻の)きぬ(蔵下穂波)に会いたい! 帰りたい!」と繰り返すその叫びは、あまりにも朴訥かつストレートゆえに、誰の言葉よりもまひろの心に響いた。これまでずっと、まひろの予想外の行動に黙って従ってきた乙丸が、初めて我を出したことも含めて、SNSでは驚きと泣き笑いのようなコメントが殺到。 「乙丸一世一代のワガママーーーー!!!!」「妻に早く逢いたいのも本心ではあろうが、どこまでも忠実で主人思いであることよ」「主人に物申すなんて絶対にやっちゃいけないことだろうに、めちゃくちゃ頑張ったね!」「死に近付き過ぎたまひろを生者の世界に戻そうと、無い知恵と勇気を振り絞った行為なのだろうなぁ」「乙丸仕事した・・・矢部さんが1年掛けて作り上げた見せ場だったと思うよ・・・」などの言葉が並んでいた。 乙丸がなかなか結婚せずに、まひろから離れなかったのは、ちやはが殺されたときになにもできなかった後悔ゆえと語っていた。あのときと同じように、親しかった人を突然理不尽な理由で失ったまひろを救い出すことで、ようやくあのときの借りを返せたような気持ちになったことだろう。さらに「ほかの男の目に止まってほしくない」といって、きぬに紅を買わなかった乙丸が、もう揺らぐことのない夫婦関係を築けたことで、ようやく紅を買って帰れたことにも安心した視聴者は多かったようだ。 「大宰府でお土産を買った時点でイヤな予感がしたけど、無事に帰京してきぬへお土産の紅を渡せてよかったな」「きぬに紅を贈る乙丸、喜ぶきぬ。これが見たかった!よかった!」「乙丸がきぬにお土産の紅を渡せたことは、このドラマで最も良かったことの一つ」「きぬさんに紅を渡さないと私の中で『光る君へ』が終われない! と思っていたのでこのシーンが観れてホッとしました」などの言葉が聞かれた。 ■ オリジナルキャラクターが魅力的だった『光る君へ』 大宰府滞在中に視聴者を残らずヒヤッとさせる死亡フラグを立てたものの、対照的な結果となった2人のオリジナルキャラクター。オリキャラの使い方が上手い大河は間違いなく名作というのは筆者の勝手な考えだけど、今は亡き直秀(毎熊克哉)といい、次回予告から察するにどうやら出世する模様の双寿丸といい、誰もが魅力的で、かつまひろの人生に欠かせないと思える人たちだったのは、見事だったとしか言いようがない。なお乙丸役の矢部太郎は、毎放送後にXで上げていた「光る君絵」の数々が、まとめて書籍になるとのこと! これは続報を楽しみに待ちたい。 ◇ 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。12月15日放送の最終回「物語の先に」では、藤原道長とまひろの関係を知った道長の嫡妻・源倫子(黒木華)がまひろにある願いを託すところと、道長がみずからの死期を悟って最後の決断をする姿が、15分拡大版で放送される。 文/吉永美和子